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アイアンクローのKOZOのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.3
中学生のときに夢中になってたのはラジオの深夜放送とプロレス。
プロレスは当時ジャイアント馬場の「全日派」とアントニオ猪木の「新日派」に分かれててどちらもテレビで観てた(国際プロレスのB級テイストも好きだった)けど、仲の良かった同級生たちと共にどちらかと言うと「大人のプロレス」だった「全日派」だった。
唯一観に行った大阪府立体育会館、かなり記憶が薄れてるけど、ブルーザー・ブロディの入場シーン(チェーン振り回して通路近くのお客さんが逃げる)と色紙の隅っこに書いてもらった天龍源一郎のサイン(どこ行ったんやろう…)だけ覚えてる。
高校、大学と他のことに興味が湧いて徐々にプロレスから離れていくのだけど。
そんな長い思い出話はこれくらいにして…スミマセン。

そして今作のフォン・エリック一家、父親のフリッツが来日してた頃はリアルタイムで知らなかったけど、あの「鉄の爪(アイアンクロー)」は彼の必殺技として当然のように知っていたし、全日にケビン、デビッド、ケリーが参戦してたようなあやふやな記憶(父が一番目をかけていたデビッドがアイアンクローを得意技として使っていたのはこの映画の根幹にあるケビンの哀しみに繋がってるような気がして切ない)とデビッドの日本での悲劇は何となく覚えてる。
懐かしさと「呪われた一家」の物語が気になり鑑賞。

前半、父の期待に応えようと夢を持って息子たちがデビューしていき、地元テキサスで人気を得て、世界タイトルマッチで強敵と闘うシーン、そして兄弟愛に胸が熱くなる。
しかし上に書いたデビッドの死後、次々と一家を不幸が襲って…こんなにエグかったのか。

偉大な父に逆らえない息子たち。恐らくバンドをやりたくてプロレスをする気はなかったであろうマイク、そしてアメリカのモスクワオリンピックのボイコットで陸上選手の夢を諦めて父や兄たちとともにリングに上がったケリーがあんなことに。

長男であるケビン(実は長男ではないことが途中で明かされる)の長男としての責任感と弟たちに先を越されていくことの苦悩。
キラキラ系!?の洋画は観なくてザック・エフロンは名前しか知らなかったのだけど、鍛え上げられた体(実際のケビンはあそこまでじゃなかった…)と父や弟たち、そして妻との葛藤の演技は素晴らしかった。

そしてネットニュースでも上がってるレスラーたちの再現度の凄さ。試合のシーンがあるハーリー(ハリー?)・レイスの老獪さ、ゴージャスかついやらしいプロレスをするリック・フレアーにニヤニヤ。出演はわずかだけど、最初に書いたブロディやテリー・ゴディには心の中で拍手。

レイトショーで観た映画館は、自分と同世代やそれ以上の昔プロレス観てただろうなあという人たちばかり。ちょっとマニアックかもしれないけど、当時のプロレスを知らなくても、プロレスに興味がない人でも熱くなれる家族のドラマだった。
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