KO

アイアンクローのKOのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.5
プロレスの世界を舞台にした物語ですが、プロレスを一切知らない自分が泣くほど普遍性がある映画でした。(アイアンクローが技の名前だって、映画見て知ったレベル)
父親を中心とした強い絆で結ばれた家族、でもそれは強力な家父長制度の下で父親が絶対という世界を幼いころから刷り込まれて育ったため父が示す以外の道があることを想像すらできない兄弟。
絆は強いのに男らしさの呪縛が強すぎて、自分の弱みを兄弟にも見せられないことで起こる悲劇たち。
子供を自分のための愛情で支配する親。。。親のコミュニケーションの取り方が個人的にも身につまされた・・・
一番家族を愛している次男ケヴィンが一人一人家族を失っていった先の爆発は胸に迫るものがあり、その後自分が生まれた家族ではなく自分が作った家族に癒され、おそらく幸せになれたんだろうなと思えるエンディングが美しかった。
最後のあたりの川のシーンからべそべそ泣いていたのですが、エンドロールで主要キャラクター達が顔出しで名前が出てきたのを見たら映画のストーリーが走馬灯のように脳内に流れてきて号泣してしまいました。こんな体験初めて。
女性らしさやフェミニズムを提示した作品が今色々作られていますが、有害な男らしさや有害な家父長制を見せる映画はほとんどなかったと思うので、その点も新しいと思いました。プロレスという特殊な世界の話だけど、もっと広く色んな人に観てほしい。
撮影、当時に見える映像の色味や画面の切り取り方も美しくて迫力があり、また見た目も実際の人物に寄せ(現代の若者に見えない、80年代の子にしか見えなかった!)身体を作り上げてフォン・エリック兄弟を演じた俳優たちは迫真のプロレスシーン含め素晴らしいに尽きる。
音楽や映画内の音そのものも印象的だったな。
ただ実在の人物のストーリーをなぞるのではなく、監督の視点が明確だったのも素晴らしいと思います。
もう1度観に行きたい。
KO

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