mitz

アイアンクローのmitzのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.5
アメリカプロレス界の「呪われた一家」フォン・エリック・ファミリー。日本でも活躍したアメリカの伝説的なプロレスラー フリッツ・フォン・エリック とチャンピオンになることを宿命づけられたその息子たちの物語。
プロレスファンにとって余りに有名な逸話であり、非常に魅力的な題材です。当時のエンターテイメントとしての業界のきな臭さの再現度は高く、テキサス育ちの永遠に垢抜けない兄弟たちから(リック・フレアはお粗末なものの)ブルーザー・ブロディやテリー・ゴディなどの脇役たちにも目が止まります。
ミッキー・ローク主演「レスラー(2008)」公開時に賛否両論あったショービズとしてのプロレスの描き方もさらっと踏襲され業界の構造はとてもわかりやすく表現されています。
その反面、核となる「呪いの源泉」についての演出が不十分です。完全なる毒親物語に傾倒する脚色もなく、かと言って薬物の存在も最低限に抑えられているため、最も重要である「その理由」について明確な演出がありません。
遺族側に対する配慮はあるにせよ、弱腰な脚本により「(ケビン以外の)兄弟たちは天国で再会しましたとさ」的な美談で終わるには惜しく物足りなさを感じます。

余談ですが、これ以外にも「ブルーザー・ブロディ刺殺事件」や「オーエン・ハートの事故死」など業界内の不審死に纏わるエピソードは数多あるのが現実。今後の映像化にも期待したいです。
mitz

mitz