ペイン

アイアンクローのペインのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.5
ちょうど同じくA24『プリシラ』同様に、史実ベースのパッと見地味に思えて、実は非常に細かい技巧の凝らされた“抑制”の1本。根底はある種のホラー。

Jホラーっぽいだとか、小津が何かの間違いで化けて出てアメリカでプロレス一家の映画撮ったような…と言われるのも至極納得というか、A24でいったら実は『ヘレディタリー』『聖なる鹿殺し』の系譜ともとれる暗黒ホームドラマ。

観賞後、しばらく劇場周辺を彷徨い歩いてしまった程に喰らい、もう終盤からずっと涙が止まらなかった。

主人公となる実際の次男ケビン・フォン・エリックと比べると、ザック・エフロンの身体造りは少々“やり過ぎ”であったりするようだが、“新日本プロレスに引き抜きたいぐらい”とプロが絶賛する程の魂の演技を魅せるザック・エフロン。町山智浩氏の言う通り、“彼を主演男優賞にノミネートしなかったアカデミー賞なんてクソくらえ!”といった感←※町山さん毎年アカデミー賞の仕事してるのにそんなこと言って大丈夫?笑

私的にはザックは今年の最優秀主演男優賞確定レベル。監督のショーン・ダーキンは、デビュー作『マーサ、あるいはマーシー・メイ』で、(※作品自体はかなり歪なインディペンデント映画ながらも)確かな手腕を見せつけていたが、今回遂に大ホームラン。

監督はよくFavorite作品として、
アン・リーの傑作『アイス・ストーム』、『ザ・バニシング -消失-』等をよく挙げており合点がいく。ドスンとくる重量級の傑作ホームドラマだ。

ザックは、『40歳の童貞男』と『フォックスキャッチャー』が出来るスティーヴ・カレルや、『ダラス・バイヤーズクラブ』と『ビーチ・バム』が出来るマシュー・マコノヒー等に匹敵するのではないか?

P.S.
なんだかな~という『シンデレラ』実写版におけるお嬢様のイメージが強いリリー・ジェームズだけれど、近年はどんどん派手さを増してきており、エドガー・ライトの『ベイビー・ドライバー』や、本作で"ケビンかわいいわね♡"と筆下ろしするビッチ感は支持したい。
ペイン

ペイン