のーのー

アイアンクローののーのーのネタバレレビュー・内容・結末

アイアンクロー(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

良かった〜〜!号泣。
好きなスポーツ映画が『フォックスキャッチャー』、好きな家族映画が『ヘレディタリー』の自分にとってはドンピシャな映画だった。
兄弟たちの苦しさが四者四様にしっかり描かれていて、それぞれが独立した人格であること、それが父親からは尊重されていないことに思いを馳せられる作りなのがすごく良かった。(ドラマ『ピースメイカー』で描かれたクリスの家庭環境も連想した。)
主人公が感じている家族という呪縛への恐怖はまさに「呪い」としか言いようがないんだけど、その言葉は世間一般の中ではオカルティックなものとしかならないのも悲劇的なことだと思った。
ゲロを吐いた便器の前で兄弟が本音で思いを語るシーンが、妙にロマンチックで記憶に残った。そんな事あるんだ。
物語と俳優たちの演技が胸を打つ作品でありつつ、映画としての時間的・画的な演出も同じくらい味わい深かった。悲劇的な展開が増えるに従ってゆっくりしたズームやシンメトリカルな構図が増えて不穏さを醸しているのも良いし、呆気なく劇的な事が起こってしまう非情な編集タイミングも、作品終盤のウエットさと良いバランスだった。夕日や朝日の差す木のカットが何度も映されていたけど、最初は柵(リングにも見える)に囲まれていたのが柵が無くなったり、他の木と一緒に映ったりすることで、兄弟たちが悲しい方法で“ファミリー”の呪縛から逃れていく様を暗示しているようで切なく、印象的だった。
クライマックスで長男が登場した時、ひょっとしたら彼が一番幸せな人生だったのかもしれない、と思うと悲しくて泣けてしまった。けれどラストで、ちゃんと幸せな形での呪縛からの解放と、未来への希望が描かれていて、優しい映画だなと思ってまた泣いてしまった。男だって映画観て泣いてもいいんだぜ。
プロレスに詳しい人たちの感想も気になる。自分としてはめちゃめちゃ満足だった!
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