オーウェン

最前線物語のオーウェンのレビュー・感想・評価

最前線物語(1980年製作の映画)
4.0
この映画「最前線物語」は、サミュエル・フラー監督の最も野心的な作品で、彼自身が第二次世界大戦で経験した第一歩兵部隊での年代記となっている。

カルト映画で有名な異才サミュエル・フラーのこと、とにかく雄大なスケールの風変わりな戦争大作で、素晴らしく詩的なアイディアと強い感情と形而上的な意味が含まれている異色作だ。

1918年、終戦を知らず一人のドイツ兵を殺した男がいた。そして、第二次世界大戦中の1942年、激戦の北アフリカで、その男"軍曹"は、4人の新兵を含む歩兵隊16中隊第一狙撃兵分隊を指揮していた。

「僕には殺人はできない」という新兵に、「殺人じゃない、ただ殺すだけだ」と答える彼。やがてシシリー島からノルマンディー上陸作戦、そしてチェコのユダヤ人強制収容所の解放へと歴戦、"戦場で生きること"をモットーとする軍曹の教えのもと、若者たちは一人前の男に成長していく------。

エネルギーと鋭い観察が詰まった作品で、魔法の瞬間とシュールで記憶に焼き付くイメージに満ちている。精神病院の患者が、マシンガンをぶっ放しながら、戦争への意気込みを宣言したり、ノルマンディー上陸の場面では、死体がはめている腕時計に長くカメラを向けたりと、サミュエル・フラー監督の演出にはドキリとさせられる。

スティーヴン・スピルバーグ監督が「プライベート・ライアン」で、この作品に触発されたことは有名だ。
また、強制収容所のひとつが解放された後、兵士が死んだ子供を抱えている神秘的な場面は、我が日本の溝口健二監督の「雨月物語」で、主人公が幽霊のもとへ帰って来るシーンを想起させますね。

とにかく、この映画を観終えて思うのは、全体を貫く明るさとヒューマンな感情、戦車の中の出産などのギャグというように、従来の戦争映画にはない、不思議な感動を味わえた作品でしたね。
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