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誕生日の一のレビュー・感想・評価

誕生日(1993年製作の映画)
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『痴漢電車 いやらしい行為』
こんなの泣くしかない。二十歳の誕生日に死ぬとダイナマイトを持ち歩いている女とビデオカメラを介してしか世界を立体と認められない男。海岸のテントの中で、海に浮かんだゴムボートの上で、置いてきぼりの二人は結束していく。カメラを手放せない今泉浩一に向かって林由美香が「目の悪い人が眼鏡をかけるみたいなもんか」とポロッと真理をこぼす。わかってくれることはとても優しいことだ。そして誕生日。身体にダイナマイトを巻き付け、テントの中で何度もライターの火を吹き消しハッピーバースデーを唱え世界にサヨナラする。寂しい、でも不思議に穏やかな時間。陸に帰る電車の中で二人が抱き合いながら尻に回す手のアップは、痴漢シーンでの手と対照されて感動的だ。エンディング、ボートの上で林由美香が歌う「ダイナマイトがよ~」最高。まんまと泣く。佐藤寿保は別名義の幡寿一としてクレジットされていて、脚本は五代響子という高橋留美子度の高い見慣れない名前の方。普段とは違う感覚で撮った映画なのだろうか。しかしひょっこり大傑作。今泉浩一の壊れた家庭が電車内でのビデオ映像で紹介される場面は、さながらSubwayCreatures(電車の中で撮られた奇人の写真や動画をまとめているインスタアカウント)のようでウケた。
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