ふじこ

マジック85のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

マジック85(2017年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

80年代当時、エイズがゲイの病だと言われていた頃、血友病の為に輸入非加熱血液凝固因子製剤を使用した所謂"薬害エイズ"を患った黒人男性が、エイズ患者の最後のお世話をする男性ガブリエルの元にやってくる。
俺はゲイじゃない、と下の階に住むゲイカップルを嫌悪する男性を、しかしガブリエルは献身的に世話をする。


ガブリエルは発症してしまったエイズ患者の世話をしながら、謎のキノコの煮汁を使って安楽死も請け負っていた。
体中に斑点のような模様が浮かび上がった、エイズ末期の患者を世話しながら煮汁を飲ませ、旅立たせる。
ガブリエル自身もゲイであり、しかしキャリアではない為にエイズ患者の世話をしているようだった。
当時、ゲイの病気だと揶揄されたエイズは、多分コンドームの不使用による性的接触で爆発的に罹患者が増えた事と、発見された初期からの偏見が相まっての事だと思うんだけど…。
今となっては、HIVに感染しても生涯薬を飲み続ければ発症させる事なく人生を終えられると何処かで見たのだけれども、この作品当時では有効な治療法もなく死を待つだけの不治の病だった気がする。
ガブリエルが何を思って彼らのお世話をするのかは分からないのだけれども、最初は頑なにゲイを嫌悪していた黒人男性が息子の事を心配しながら、息子がダメだと言ってもしょっちゅう会いに来るこの環境自体を憂いて自死を選ぶところにフィーチャーされている。

血友病で治療を受けたが為にエイズを患ってしまった男性と、知らずに妻に感染させてしまって旅立たせてしまった上に、当時末期の患者の世話をしてくれる場所なんてなくて、嫌悪しているゲイの住処みたいな場所で療養せざるを得ずに、最愛の息子は自分を心配してしょっちゅう訪れる。この黒人男性の事を思うととても辛い。血友病は息子にも遺伝して、大好きなバスケットボールも出来ない。
一方で、ガブリエルの事は全然語られなくて、ハッテン場のような場所で一時のパートナーを探すシーンだけは映されるけれども、階下のゲイカップルの片方を旅立たせた後に残された方との接触を強めに拒否するシーンなんかもあって、なかなか謎だった。ゲイなんだけれどもHIVのキャリアではなく、しかし他のゲイとの接触は絶っている…って事?
このガブリエルの事が全然分からなかったのが寂しい。

わたしはホモフォビアではないし、愛の形は多様だよね と思っているのだけれども当事者ではないし、彼が何を思ってお世話をして、何を思って見送り続けているのかを理解したかったなぁ。
ふじこ

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