柊

時代遅れの最先端 ー風の谷幼稚園の子どもたちーの柊のレビュー・感想・評価

3.8
天野先生のワンマンショーだったかな。
天野先生が前職の幼稚園で何を学び、何に限界を感じてこの風の谷を始めたのかも気になった。
そこにはきっと大きな理由があるはずだから。でもそこから立ち上げまでの行動力には脱帽。支援者を募るって、まだクラウドファンディングなどない時代だし、そこからあの広大な土地を提供されるってコトだけで、この人のカリスマ性を感じてしまう。
故に危うさも感じる。

幼稚園は決して1人の主義主張では成り立つわけではないと思う。構成するスタッフ、支援する人達、何よりも保護者の協力。それらが全て天野園長を崇め奉ようにならない事を祈る。
どんなトップにも間違いや時代の変遷に伴う変化はあると思う。そういった難問にどうやって園として対応していくのか?天野先生を支えるスタッフの人達の様子ももっと見たかったな。この作品ではトップダウン感を強く感じてしまったから。

子ども達の姿には何の文句もない。こんな風な幼稚園がもっといろんな地域にあればいいのにな?って思うけど、よく考えるとそんな訳にはいかない働く親の実情も見えてくる。
この幼稚園、保護者への要求はかなり高い。登園に至っては、交通機関は無いので、各自が園まで車、自転車(かなり大変)で連れてくる以外に無い。それにお迎えも早い。お弁当も必要。もちろん学費も発生する。共働きの親にはハードルは高い。
今の時代、良い保育、良い教育を受けるには保護者にそれなりの環境が整っていることが大前提。

風の谷がある場所は確かに緑豊かな地域だ。それを維持していく努力も語られていたが、実現するには本当に多くの理解者の努力は不可欠であり、天野園長ののカリスマ性に魅せられた保護者や支援者あっての環境維持であることは明らかだと思う。
以前、3.11のあとに東京が風下の街となり、焼き芋行事ができなくなった時に、保護者の努力によって、関西から落ち葉を調達して焼き芋行事ができたという話を聞いた。それだけ協力する保護者が多いと言う事は素晴らしい。
いつまでもこの環境を守りながら、子ども笑い声の絶えない幼稚園であって欲しいと願うが、どんな場所にもパラダイスは存在しないと言う事を私は知っている。
柊