eulogist2001

シェアの法則のeulogist2001のレビュー・感想・評価

シェアの法則(2022年製作の映画)
4.1
シナリオが秀逸。群像劇タッチながら、中心は明確にされているので、作品を観始めてから焦点をどこに定めるか徒に迷うことがない。

またストーリーを進め、後半にかけて回収するための伏線がけっこうばら撒かれているが、大きな違和感なく納められている。もちろん舞台からの映画化のせいなのか、若干の説明口調や展開の流れとしては自然さに欠ける場面もあったが、意外性と新たな発見を含んだ巻き取りには感心した。

人物造形やその背景の説明とキャスティングや台詞、演技にも破綻は感じなかった。

やはり宮崎美子と小野武彦の存在感は大きく、本作の肝を形作る上では欠かせない役者だったろう。彼らがいることでの深みは演技やセリフだけではないだろう。

本作のテーマは思いやりとユーモア、または生きてる存在への偏見なき愛情と柔らかな寛容さと言い換えても良いかもしれない。

語るべきテーマが明確でそれにまっすぐにシナリオが書かれ、役者や映像、音楽が連動して動く。シンプルだけどそうした作品が強くこころを揺り動かす。

客を呼ぶためにはどうすべきなのか。そこから始まっているような大作が多い中、本作のような作品を観ると心底ほっとするし、自然と拍手したくなる。

もっともっと多くのひとに観られるべき佳作。
いやあ映画ってほんとうに素晴らしい。こうした体験が時折りできるからやめられない。

※上映後、脚本家と役者さんのトークがあった。ほとんど雑談みたいなものだったが、その語り口そのものが思いやりとユーモアに溢れていた。自らの理想や主張を暴力的に激しく語るのは完全なる自己矛盾。様式(手段)にこそ、主題が宿る。それを目の当たりにできました。
eulogist2001

eulogist2001