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SaltburnのNMのレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
4.0
知らない人は閲覧注意。10代の子とか観たらトラウマになるレベルの描写。大人でもしばらくまぶたにこびりついて離れない。残虐というよりは気持ちが悪いという意味で。
観ている途中、度々ヒエッと震え上がる。
もちろんバリーに対してはこれは褒め言葉。そういう俳優だと承知の上で観てほしい。いま怪演と言えば3本の指ぐらいに入るのでは。プライベートはちゃんとした人らしいけど。

そ最後に結末を知らされると、今までの辻褄を合わせようとして脳内に冒頭からの高速再生が起こる。しかし結局はてなマークで満たされ、分析しようとしても無駄だろうなと悟り、少し笑ってしまう。
どこから計画されていたのか。どこから自分の思い込みだったのか。

思い込みは確かにあった。うんうん当然家庭環境は荒れていただろうね、はいはい唯一の友人に対して感情がこじれちゃってるんだよね、とか。その責任は一部自分のせいでもあるので悔しい。
だがそんな原因などどうでもよくなる展開。
結局彼がどういう人間だったのか何が本当だったのか、知りようもない。

不条理ものでもあるが、例えば『セブン』みたいに悶々とした悩みが鑑賞後続く、ということはない。思い切りむちゃくちゃやって無双するので、むしろ爽快感すらある。とにかく問答無用とでもいうか。もう最後はフッと笑ってしまう。

ある人や界隈に憧れるが同時に憎たらしい、という状況はよくあることだろう。かといって普通その程度でそこまでしない。そのバランスが全然取れていないところは怖い。とんでもなく酷いことをされたから仕返しするという理屈ではない。視界に入ったものがなんかムカついた、気に食わなかった、ちょっと遊んでやるか、という程度。
それ以上彼の心理を読むことは無理。自分でやって自分で泣いて、とかもう説明不可。

おそらく家族どころか関係者全員やられていても不思議じゃない。この調子でいけば一体この先の生涯で何人消すんだか分からない。彼の目に止まったら最後。
きっと最初からいつでも実行に移すことはできた。そして獲物で遊ぶ猛獣のように、最高の瞬間を自分のタイミングで決めた。


Evelyn Waugh……アーサー・イーヴリン・セントジョン・ウォー(Arthur Evelyn St. John Waugh、1903-1966)は、イギリスの小説家。
Times New Roman……クラシックなフォント。横幅を取る。タイムズ紙が新聞用として作ったラテン文字のセリフ体書体。
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