三樹夫

Saltburnの三樹夫のレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
3.8
アマプラでしれっと配信されている、『ルームメイト』をブリジット・フォンダじゃなくてあたおかの方のジェニファー・ジェイソン・リーを主役にして両方の性別を男にしヨルゴス・ランティモスが監督したみたいな映画。監督は『プロミシング・ヤング・ウーマン』の人で、タイトルのソルトバーンは主人公の好きピの実家がある街。

2006年に名門大学に入学した見るからにダサ男の主人公。ひょんなことからイケメンと出会い、パブでこんなのされたら好きになっちゃうぅぅと心もイケメンなところを見せつけられ、しかも夏休みに俺の実家来ない?と誘われる。好きピの実家は英国貴族みたいな大邸宅でそこでひと夏を過ごすことになるが、好きピの家族のクセが強い。なるほどこれは好きになった人がヤバい奴パターンかと思って観ていたら、ヤバい奴は主人公だった。
主人公の変態ボルテージは度々天元突破を起こし、好きピのバスタブでの自涜行為を目撃し、残り湯をペロペロ舐めだす変態有段者っぷりを見せつける。またバスタブに水垢ついていて若干黄ばんでる中でペロペロするのが観ていてうへぇとなる。便器に若干糞がついているカットなどがわざわざある、いやらしい演出によるブラックコメディとなっている。基本的に主人公は体液ペロペロマンなのがキモくて、笑いは笑いのつまみを上げまくると笑えないぐらいになるが(だからといって面白くないわけではない)、素直に笑う笑いではないある程度上級者向けの笑いのテイストで演出されている。ただ墓姦は、どれだけ好きでも埋められなかった距離感という切なさが内包されていたが、やっぱこいつ変態上級者じゃねぇかというコメディでもある。好きピのオヤジから帰ってくれない?と言われて僕は残りますよなんていけしゃあしゃあと言ってたのも笑った。頼むから帰ってくれ。オヤジがこの世の終わりみたいな顔してるリアクションも笑う。最後はあたおかPVで締めるのも良い。

大学の一番最初に話しかけてきた数学マンとかもそうだし、振り返ってみると登場人物全員あたおかだったな。大学で一番最初に行動を共にする人とはすぐに関係が切れるという大学あるあるもあったりして、どこの国の大学も似たようなもんなんだろうな。数学マンはさすがに戯画化されたキャラではあるが。
淀長先生が喝破した好きすぎて君と同化したいという『太陽がいっぱい』みもあるし、女の子からもモテモテのイケメンを独り占めしたいなど色々な面において独占欲が強いと思われる主人公で、彼の行動や心理を考えたりする余白があってそこが映画の良いところだと思うため、実はこうでしたの種明かしシーンは余計なように思えた。
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