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Saltburnのcassのレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
3.5
1:1.35の映像は本当にどこ切り取ってもひたすらposh。promising young womanの監督と聞いて、話の内容も、映像も、キャストも、aestheticもめっちゃ理解だし、それがgen zにウケたのもとても理解。だけど、それが皮肉な気もしなくもない。

中間層の内気な主人公が、超上流階級の男の子に恋してしまう失恋ストーリーかと思いきや全然違った。じゃあ階級ストーリーか!と思いきや、そこまで階級の差に関する議論には足を突っ込んでない気がする。映画はオリバーの目線で進むものの、彼の中間層としての意識はそこまで描写されていない。どちらかといえば、彼が何をしてでも上へ行きたい方が強調されている。何故っていうのも、監督自身上流階級出身の白人posh娘でオックスフォード行ってるのは、まあなんというか、、、なるほど。逆に、上流階級目線として、ミドルクラスが惨めなフリをする風潮を風刺しているのか。しかもそれがホラー・スリラーとして描かれる。上流階級の人々はそこまで財産を奪われるのが怖いのか。ペロニズム風刺系と似た匂いがした。

そういう点では少しこの作品自体に寄り添うことが難しく感じる。一方で、クィアの面では斬新的というか、めっちゃめちゃクィア。そもそも登場人物だれもセクシャリティーのレーベルをつけられていない。お前ゲイか!みたいなよくありがちなジョークという名のセリフも一切ない(ありがとう)。しかもオリバーに関しては、肉体関係を持つことには抵抗がないけど、そもそも恋愛感情には無関心。それでもaromanticやbisexualだの付けないあたりが、開放的で好きだった。(だけどfelixとoliverキスすらもなかったやん結構待ってた(は))

でもだからと言って、登場人物に感情移入が出来ないわけではない。というか、狂ったのが主人公であり、観客にそう思わせるように作られている。とはいえ、人が自殺してもいつもの事のように振る舞ったり、事が起きると糸のように縁を切る豪邸家族も相当狂っている。上下という視点からすると大抵は共感に偏りが出るのに対して、この作品は両者を同等に嫌えて、同等に可哀想と思える。不思議に矛盾し合う世界観がリアルなのかもしれない。
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