てつこてつ

Saltburnのてつこてつのレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
4.5
前情報ゼロで鑑賞したのが大正解。

このストーリーは、現代版パトリシア・ハイスミスと言っても過言でないほど、ある意味ロマンに溢れ、かつ、キャラクターのダークな心理描写が絶妙に上手い。

てか、ほぼ設定が「リプリー」or「太陽がいっぱい」なんだけど、いまだにイギリスには根付いている?現代の特権階級の一族に置き換えている点、リプリーにあたる主人公を演じたバリー・コーガンが、その独特の容貌(特に目!)ゆえ、余りにも妖艶で、男の目から見ても、彼が憧れる御曹子を演じたジェイコブ・エロルディよりも魅力的である点が、中盤以降の展開にとっても説得力があって見事な脚本。

posh(気取り)を超えてsnob(高慢)に近い名門オックスフォードに通う特権階級の学生たちの“悪気が無い”台詞が結構刺さる。「奨学金を貰い、リサイクルの服ばかり着ている男の隣に座りたがる女の子なんかいない」・・って時点で、最近はユニクロかワークマン、下着に至ってはしまむらで十分と思っている自分はお払い箱だな。

タイトルのロンドン郊外のSaltburnの豪邸に舞台を移してからの展開は、静かでありながらも凄まじい。中盤の主人公がバスタブで見せる行為、終盤の墓場の行為は衝撃的ながらも、彼の真意を諮るには必要な演出。

個人的には、最後の種明かしの下りは蛇足(それが無くても十分誰が何をしたのかは観客にはしっかり伝わる)だと思うが、上品でありながらも容赦無い心理サスペンスの傑作。

バリー・コーガンは「聖なる鹿殺し」「ダンケルク」でしか見ていないが、本作の主人公役が余りにもハマっていたので、今後も注目していきたい。
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