凛太郎は元柚彦

Saltburnの凛太郎は元柚彦のレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
4.5
こりゃ傑作だわ。
下流階級なのに仮面をつけて生きてる虚言癖のオリヴァーと上流階級にいながら本能的で正直に生きてるフェリックスの対比は、今までのイギリス映画の社会描写から頭一つ抜けたシニカルさがあった。
バリーコーガンはすごいな。普通の役者が頑張ってサイコパスを演じてる中、バリーはガチのサイコパスが普通の人間を演じてるような錯覚を引き起こす。本物の役者は〝眼〟がちがう。
登場人物の関係性や会話がリアルで興味深いからシナリオにすんなり入り込めて、時折クソ気持ち悪い現実離れしたシークエンスが気になるものの、ラストシーンでちゃんと説明されるから結果的に秀逸だったように思う。
そこも含め、この監督はユーモアのセンスがいい。徹底されたリアルから滲みでる笑いとか、そこまでやっちゃうの!?的な過剰演出とか。
「リリーのすべて」では硬派な作家かと思ってたが、「プロミシングヤングウーマン」以降こういう痛快でパンチのある社会派ドラマを世に送りだす名監督としての手腕をひしひしと感じる。マルジャン・サトラピ監督と並んで俺の中で二大女性監督の一人になった。