きょ

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のきょのレビュー・感想・評価

5.0
永遠の日常・終わりゆくクソヤバい世界


自分の漫画人生において、浅野いにおの占める割合は非常に大きい。
作家性そのものが好みだし、絵柄もドンピシャ。
そんな作家の傑作が、映像化されるとなれば観にいく他はあるまい。

原作の魅力は、細部まで書き込みが凄まじい大迫力の絵と、社会的メッセージ性の強いストーリー、加えて若者の心を揺さぶる台詞にあると考えている。
今作では、漫画独自の魅力である凝った作画とは別ベクトル、すなわちアニメーションが、物語のある種グロテスクな要素を際立たせていた。
また、主演2人の演技も見事。
可愛さと信念を内包する、芯を持つ声だった。

原発事故のメタファーから始まる、様々な社会的テーマを持つ本作は、コロナ禍を予想したかのように2024年現代においても未だ根強い共感を呼ぶ。
特に門出の母親など、自身の肉親を重ねた。
コミカルさでデフォルメ出来ないほど、生々しい描写。
世界がどれだけ変わっても、「俺たち」は変わることが出来ないのだ。

2人にとって「絶対」とは。
信頼、友情か。または依存、支配、束縛か。
恐らく、凰蘭は前者、過去の門出は後者だろう。
誰かの「絶対」になりたい。何度か思ったことがあるが、本作には絶対的な存在の二面性を見せつけられた。

これ以上は語るまい。世界、そして自身の残酷さに、気づくことのできる物語である。
きょ

きょ