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デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のhirokiのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

8月31日、日本の上空に突如として現れ、のち3年間正体不明のまま佇み続ける母艦。日本の自衛隊はその母艦に侵略者が潜んでいるとして、攻撃兵器を開発し、迎撃活動を続けていた。そんな日本でごく平凡な高校生活を送る少女、門出(かどで)とおんたん。2人は互いにとって特別だった。友達と過ごす何の変哲もない時間を楽しむ2人の日常が、刻々と壊されていく。

整理がなかなか付けられない。見終わった後に、ストーリーの解釈や鑑賞中に沸き起こった様々な感情を思い出しているのだが、パッとまとまらない。色んなものが頭の中でごちゃごちゃになったまま残っているようなそんな感覚。だけどすごく面白かったことだけは確かだ。

門出とおんたんの現在が描かれる前半部と、過去が描かれる後半部の大きく分けて2つのパートに分けられている。

前半部は母艦や正体不明の侵略者が何かを起こすのではないかという不穏な空気がありながらも、門出やおんたんたちの楽しい高校生活の日常が描かれていて微笑ましい気持ちになった。失っても困るものがないということを門出が言っていたが、誰にでも大切にしたいものはあって、門出にとってはおんたんがそうだし、友達と過ごす日々がそうであったと思う。しかし、その日常がキホの死という大きな出来事によって、壊されていく。キホの死を知りながらも気丈にいつも通り明るく振る舞うおんたんが、門出の問いかけに「知ってるよ!」と叫び返すシーンは胸が痛くなった。

後半部はかなり衝撃的で、それまでのイメージがガラッと覆された。今の門出とはまるで別人な過去の門出とおんたんがそこにはいて、門出の暴走に気付き、止めようとするおんたんと門出が衝突するシーンはかなり印象に残っている。自分の中の正義が罪なき人を傷つけてしまったことに気付きながらも、それを認めてしまったら自分が保てなくなってしまうから、正義を貫き続ける。それが正しいことではないとしても。どんな時でも、自分が間違っていると認めるのは容易いことではないから、おんたんの存在は門出にとって救いだったのではないかと思う。自分の弱さに負けずにできるだけ正しくあるために、人は誰かと一緒にいるのではないかと思った。

また、自衛隊が母艦から出て来た未確認生命体(政府は侵略者と呼んでいる)を撃ち殺すシーンはすごく嫌な気持ちになった。自分たちから見て理解ができない者は悪と決めつけたり、一度悪いことをしたら手のひらを返すように、その人の人格全てを糾弾するような世の中が果たして良い世界なのか疑問に思う。そんな世の中への風刺もこの作品には多分に含まれているように私は感じた。

あくまで前章なので、どんな結末になるのかや、侵略者の正体など、わからないことだらけなので整理がついてないが、後章がとても楽しみになる作品だった。
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