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デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のbluebeanのレビュー・感想・評価

4.5
宇宙船が荒れて未曾有の事態が起こって数年後の世界。3.11やコロナを経て変化した現実世界も、ミクロのレベルで見るといつもの変わらない日常が続いている。そんな空気感を象徴しているようでした。でも確実に世界は変化していて、それに私たちが気付いていないだけかもしれません。

変わりゆく世界で、まずは自分の大事な人たちだけは守ることが大事。でもその対象は変わりつつあります。家族という共同体は解体されて久しく、本作でも毒親が描かれるのみです。そうなると、大事なのは気の通じた仲間たちです。でも本作はその先を見ていて、その仲間との関係が「絶対」になり依存していくと、危険なことになるという流れが描かれます。

侵略者への攻撃も、ウクライナ戦争やイスラエルの紛争を先取りしているかのようなリアリティがありました。侵略者は宇宙船を浮かべているだけで、地球に対して攻撃など一切していません。それでも強い防衛本能ゆえに、対話ではなく先制攻撃を選ぶ地球人。その流れは全く違和感を感じないもので、ゾッとしてしまいました。

テクノロジーに対する見方も面白かったです。ドラえもんのパロディのイソベやんという作中劇が出てきます。ドラえもんではのび太が道具を自分の欲求のために使って痛い目にあうという流れが定番です。読者は、しょうがない使い方するなよ、と思ってしまうわけです。でも本作では、テクノロジーを「正義」のために使ってしまう。それがもたらす恐ろしい結果は、かなりリアリティがあります。
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