久遠

熱のあとにの久遠のレビュー・感想・評価

熱のあとに(2023年製作の映画)
4.1
黒沢清に師事していたこともあって、印象深いショットが多く、不穏さを画面いっぱいに充満させる技術は確か。長く感じるのは、出来事を詰め込みすぎな脚本の弱さかなと。ただ、本音を云う場を、懺悔室/診察室の2つで見せるのは大変好み。橋本愛、木竜麻生の演技も◎ 共感の坩堝。

主人公の「愛」は“本当”で、誰かの器に同期すると全く違う感情に変容してしまう。それは「現実」で、ただの過去だ。そのような、沙苗の信条は僕のこれまでと心を攪拌し、否応なく疲労と共感の海に溺れてしまった。

決してハードルの高い作品ではなく、Z世代の恋愛群像劇として面白く観ることもできる。
こだわりのあるショットの連なりが、人によっては却ってスムースな鑑賞の障壁になりかねない危うさもあるが、私的には大満足の映像美だった。
久遠

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