ハル

熱のあとにのハルのレビュー・感想・評価

熱のあとに(2023年製作の映画)
3.9
事前情報無しでの鑑賞だったため、「あ〜歌舞伎町でおきたあの事件か!」そう、気付いたのは冒頭シーンを見てから。例のホスト殺人未遂事件から着想を得たという本作。
生と死が似通ったベクトル、愛の形を残すために共に死ぬと言う選択肢を選ぼうとする沙苗(橋本愛)
彼女が同棲していたホストを殺害しようとし、そこから6年後の世界が舞台。

正直、登場人物の誰にも共感はできないけど、恋愛に“普通”なんてないと思う派なので、これくらいイカれてる人もありなのでは?
ただ、自分の恋人が沙苗だとしたら…数日すら精神が持たなそう。
“愛=死”の概念を持ち込まれるのは相手からしたら堪らないよね…
唯一まともだった夫の健太(仲野太賀)も壊れてしまったし、沙苗の“愛”という言葉の胡散臭さと切実さが妙にリアルだった。

刑期を終え、戻ってきて良き旦那もできたのに、まだそのホストが好きと言ってしまうサイコパスぶりに震える。
直情的な考えかしかなく、盲目的に信じてるようにも感じられ…怖い。
恋愛もハマり過ぎたら毒になりうる、お手本のような存在だ。

後半になるにつれ物語そのものと人間関係そのものが破綻していくので、その点が誰からも理解されず、低評価なのだろう。
ただ、それでも…橋本愛、仲野太賀、木竜麻生の純粋な芝居が支離滅裂にも感じてしまう部分を補っていて、最後まで没入。
3人とも表現力が高く、中でも仲野太賀は図抜けて存在感を示している。
「これ、一体どうなっていくの?」と、その熱意に気持ちが引き寄せられてしまった。

合わない人には徹底的に受け入れられないと思うし、共感できる人もほぼいないはず。
とはいえ、世間的な評価よりは楽しめたので天邪鬼な人は手を伸ばしてみるのもありかもです。
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