コーディー

熱のあとにのコーディーのレビュー・感想・評価

熱のあとに(2023年製作の映画)
3.6
理屈なんかが及ばない突き抜けた愛の世界に生きる沙苗と、そんな彼女の壁を取り除き、たとえ僅かでも何かを共有しようとする健太。
決して交わらない愛の定義に葛藤しながらも激情に縛られ共に深淵を彷徨う二人、そこに謎の女性も加わっての常軌を逸した愛の行方…
歌舞伎町ホスト殺人未遂事件に着想を得た物語ってことで、なかなか理解するのは難しかったけど興味深い内容でした。

ホストとの世界が紛れもない現実だった沙苗にとって、どこか空虚な健太との日々。そんな隣にいるのに親密にはなれず境界に隔てられたような捻れた関係。なのに今日も隣にいる…
ここにも理屈じゃない何かが二人の間に蓄積されてるようで、多様な愛のカタチ、その厄介さと可能性を見つめる展開も良かった。

まあ愛の尊さを哲学的に訴える沙苗に対して、個人的には〝そんな大したもんじゃねぇからな〟とは思ったけどw
そんな言葉さえ響かない、傍から見れば狂気でしかない感情を切り捨てるのではなく推し量ろうとする監督の想いには共感したし、特に終盤のあるシーンでの揺らぎの表現なんかは神聖さと滑稽さが入り混じった独特な味わいご印象的でした。

難しい役に挑む俳優さん達も皆んな良かったけど、中でも登場から謎な雰囲気プンプンだった木竜麻生さんの浮世離れしているようで…なミステリアスな存在感に一際輝いていた!