鶏

クラユカバの鶏のレビュー・感想・評価

クラユカバ(2023年製作の映画)
3.4
『レトロ調の絵と音楽が良かったけど・・・』

ここ数カ月、テアトル系の劇場で上映前の注意事項を絡めた予告編が流れ続けた本作をようやく観に行きました。ちょうど時間が空いたので、塚原監督はじめ、主演の神田伯山らが登場する初日舞台挨拶の回で鑑賞出来ました。

予告編によれば、主人公の荘太郎は探偵で、彼が大量の失踪事件を捜査する話であるらしいこと、絵の感じから大正時代から昭和初期の東京をイメージした街が舞台であることは分かっていましたが、題名の意味がイマイチ分からない状態でした。”クラ”と言えば”忠臣蔵”、”ユカバ”と言えば軍歌の”海行かば”を想起したものの、探偵物とか時代背景とはマッチしないものなので、どんな内容にしてこの題名を付けたのかに興味がありました。

結果、”クラ”とは”暗がり”のことであり、”ユカバ”は”海行かば”ではなく、単に”行かば”という意味でした。要するに、主人公が東京をモデルにしたと思われる大都市の地下に広がった文字通りのアングラ街を冒険するというお話だった訳ですが、正直この世界観がピンと来ませんでした。

最大の問題は、主人公の荘太郎の人物像とか、どんな探偵なのかと言ったものを掴む前に物語がどんどん進んでしまい、最後まで主人公に感情移入出来ないままだったことでしょうか。上映時間が1時間と限られていたので、余計な話を一切入れなかったということなのだと思いますが、もう少し荘太郎を理解できる話を入れて欲しかったなと思ったところでした。

ただ塚原監督独特のレトロ調の絵の感じや、それに合わせた音楽は心地よかったです。また、講談界の麒麟児・神田伯山の声も良く、さらには活弁士の坂本頼光も、小池朝雄のコロンボ調のトーンで登場し、満足させていただきました。

そんな訳で、本作の評価は★3.4とします。
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