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マイ・スイート・ハニーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

マイ・スイート・ハニー(2022年製作の映画)
4.0
 一人娘を愛し、彼女の為に運命のパートナーを見つけようとする41歳のイ・イルヨン(キム・ヒソン)はある日、自身が勤める高利貸し店の顧客となった男の弟として、45歳の製菓会社の研究員チャ・チホ(ユ・ヘジン)と出会う。この男が見るからに変人で、45歳の今まで誰とも付き合ったこともなければ、恋愛もしたこともない。元指名手配犯の兄は製菓会社で優秀な社員であるチャ・チホの給料を当てにする始末で、何と言うか身内に恵まれていないのだ。だがおひとり様を楽しむ力はなかなか優秀で、韓国きっての名優ユ・ヘジンはどこか憎めない堅物のチャ・チホを飄々と演じる。ある日そんな彼の前にシンデレラが現れ、食事を2人でするという奇妙な契りを交わす。韓国映画にしてはアメリカのラブ・コメのような軽快なラブ・ストーリーだ。一度も恋をしたことがない男は、もう恋はこれで最後にしたいと思う女と出会い、互いに惹かれ合って行く。ラブ・コメは今は距離感がバグった2人の恋愛模様を観ているのが最高に楽しい。

 例えるならば『違う惑星の変な恋人』の韓国版のような映画で、出て来る登場人物は主人公のチャ・チホを筆頭に、みな変人ばかりで可笑しい。チャ・チホの兄で借金漬けのギャンブラーであるソクホ(チャ・インピョ)も、彼の恋人だが異性に異様に惚れやすい小悪魔系女子のウンスク(元Secretのハン・ソナ!!)も、しまいには製菓会社の御曹司で自信過剰なビョンフン(チン・ソンギュ)も全ての登場人物たちが何かしらのBUG味を抱えている。抱えていないのはイ・イルヨンの娘くらいに見えるが、彼女もやがて病的な心情が明らかになる。これはイ・ビョンホンの脚本によるものか、それとも監督のイ・ハンによるものかははっきりとはわからないがおそらくその両者によるコメディ・センスが絶妙で、会社の上司とのやりとりもドライブ・イン・シアターでのやりとりでもこれまで一度も観ることが無かったユ・ヘジンの懐の深さが垣間見える。後半は男の暴力を嫌う女性側の気持ちを母娘が代弁する。製菓会社の開発担当として、普段はお菓子しか食べないチャ・チホがイ・イルヨンの手料理で健康になって行く様子がまた絶妙で、思わずキンパと呼ばれる韓国風海苔巻きが食べたくなるような軽妙洒脱で類を見ないロマンティック・コメディぶりがとにかく素晴らしいウェルメイドなコメディ映画。
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