デニロ

二人静かのデニロのネタバレレビュー・内容・結末

二人静か(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

エンドロール終了後、新宿ゴールデン街にあると思しきバーが映し出される。店主は映画雑誌を広げ、カウンターには若い女。女は携帯で、もう来ているよ、待ってると言いながら店主にビールとグラスふたつ、と注文する。すぐに男がやってきて、仕事長引いちゃってさなんて言っていて、今日何やってたのと女に聞く。先輩(男)の部屋でゴロゴロ。学生はいい身分だなあ、なんてじゃれあっている。いつ点けられたのか店のテレビでニュースが流れている。女は、/あ、先輩の部屋の鍵鍵返しておきます。/いいよ、そのまま持っててよ。いつでも使っていいから。/・・・じゃ、そうします。/こんなやり取りから女は昨晩男の部屋に泊まったことが分かる。そしてそれがふたりの初めてのセッスクの時間だったことも。テレビのニュースが断片的に聞き取れる。行方不明だった女児が‥…9年ぶりに・・・・発見された云々。

濃厚なエロスの作品だと思って出掛けたんですけれど。

お願いします。冒頭、駅前でのビラ撒きのシーン。行方不明の娘を探しています。お気づきのかたはお知らせください。夫婦が申し訳なさそうにビラを撒く。家に帰ると嫌がらせの手紙が届いている。いつものことだ。子どもの部屋。

え、何の話なのよ。

娘が居なくなってからはや5年。それはお爺ちゃんと公園に行っているときのこと。お祖母ちゃんがわたしも一緒に行っていればねえ。いえ、僕たちが預かってもらったんですから。ふたりの娘はある日行方不明になった。その日以後ふたりは娘の帰りを待つ、探し続けることの連続だった。ビラを撒いているふたりの前に手伝いたいという妊婦が現れる。

男は出版プロデュースの会社に勤務している。その規模はよく分からないけど彼のいる部屋のデスクの周りは年下の男女ふたりしかいない。自分でコピーをして、後輩にこれ回しとして、というくらいだから他の部屋にも部署はあるのだろう。ビルの外のガードレールに腰掛けて缶コーヒーを飲むのが男の日課なんだろうか。年下の女子が煙草を吸いに寄ってくる。/今度パパ活始めたんです。/何で?/手取り18万で、奨学金の返済3万、部屋代ガス光熱費で残金5万円ですよ。/また別の日、女子の首に痣がついている。/それ、どうしたの?/相手が首絞めさせてくれたら5万くれるっていうから。指の骨折らせてくれたら100万くれるって言われたけど、さすがに断ったわ。/男は女子の部屋にいる。女子が男の下半身に蹲るが、/全然だめですね。/妻としかできないんだよ。/奥さんとはしてるんですか。/しばらくしてない。/お子さんがいなくなってから?/子供が生まれてから。/別の日。/今日行ってもいいかな。/わたし結婚するんです。/パパ活の男?/パパ活で暴力振るわれていても、そんな男辞めろって言わないんですね、あなたってそういう人なんです、もう来ないでください。/

男は妻に、俺たちは子どもを作るために結婚したんじゃないだろう、と迫る。女は立ち上がって男の頬を引っ叩いて出てゆく。男と女の生活はすれ違っている。それは手伝いたいと言って来た女の素性が分かってきたころからだ。いや、ことの始めからそうだったのかもしれない。妻は手伝いの女と行き来するようになる。女はホームページの更新やビラの編集などを手伝うようになる。男は妻に、おかしいだろう、あまり付き合わない方がいいんじゃないか、と忠告し始める。妻は行き来するうちに女が嫌がらせの手紙を書いていたことを知り詰る。女は、かつて自身が9年間監禁されていたことを告白する。

そこから妻は女に感情移入していくことになり夫との間の齟齬が広がっていく、そんな話。

妻が家に戻った夜ふたりはセックスをする。でも、次のシーンでは二人の暮らしていた部屋から生活感が消える。

職場の女子が、今日で辞めると言い、荷物を取ってそそくさと出て行く。眼に眼帯、小指には包帯が巻かれていた。

何も莫い男。

冒頭のバーのカップルは、そんな夫婦の前日譚だという。
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