ビンさん

二人静かのビンさんのレビュー・感想・評価

二人静か(2023年製作の映画)
3.0
雅之(水澤紳吾)と涼子(西山真来)の夫婦が、都営新宿線一之江駅前(僕は元江戸川区民だったので、場所はすぐ判った)でビラ配りをしている。
二人には幼い娘明菜がいたが、5年前に行方不明になったままだった。
ビラは明菜の消息を求めるものだったが、まったく手がかりのないまま月日が過ぎ、夫婦の関係も冷めきっていた。

今日もビラ配りをしていると、手伝わせてほしいと一人の身重の女性、莉奈(ぎぃ子)がやってくる。
彼女は近くのマンションに住んでいるので、いつでも手伝えるという。
涼子は莉奈に親近感を抱くのだが・・・。

不勉強で存じ上げなかったのだが、監督の坂本礼氏はピンク七福神と呼ばれる、ピンク映画の精鋭とのこと。
ピンク七福神とは、いわゆるピンク四天王の次世代くらいの方々なのだろうか。
〜四天王はわかるが〜七福神は存じ上げなかったなぁ。
江戸川区のご出身とのことで、なので冒頭、一之江駅前が登場したのかも。

それはともかく、本作は行方不明になった娘の行方、消息を絶った理由が明かされるミステリー作品かと思ったら全然違った。
もし、僕のようにそういう思いで観に行こうとする方は、ちょっと注意が必要かと。

映画は夫婦のもとに、娘を誘拐したとおぼしき人物から手紙が届く。
が、その手紙の主は意外な人物だった。
このあたりまではミステリー作品なのだが、ここから内容は大きくシフトするし、後半は涼子と莉奈のちょっとしたロードムービーのような展開になる。

このあたりの展開には困惑してしまったし、娘が行方不明になったエピソードは何処かへ行ってしまうのだ。

映画は雅之と涼子夫婦にある出来事が起こって、関係が崩れていきそうになるが、そこからどう修復するか、そこに重きが置かれていて、そのきっかけが誘拐事件というのは、正直ちょっと抵抗があった。

ただ、後半のロードムービーの部分、場所は成田近辺なのだが、ここのロケーションがいい。
荒涼とした、涼子と莉奈の心情ともマッチしたその空気感は凄いなと感じた部分。

ここでの時折り上空を飛行する飛行機の音が重要な意味を持ってくる。
莉奈の生い立ちにも鳴り響き、雅之と涼子との印象的なクライマックス後のシーンにも鳴り響くのだ。

なお、本編には一切劇伴は流れない。
なのでより一層、効果音の印象は強い。

総じてちょっと理解しづらい作品だった。
エンドクレジット後に、スナックが舞台の1シークエンスが描かれるのだが、ここでのラジオ(TVか?)の音声に聞き耳立てるべし。
けっこう重要なことを言ってるが、これがまた聞き取りづらいんだ。
敢えて聴こえづらいようにしているのか、そうでないのか。
ここも合わせて監督の創作意図がいまひとつ見えてこなかった。

鑑賞したのは公開2日目で、坂本監督、水澤紳吾さん、リモートで西山真来さんによる舞台挨拶があった。
舞台挨拶を聞いても、監督による創作意図も、莉子というキャラの行動など、いまひとつわかりかねるものがあった。

あ、スタッフの中に『テイクオーバーゾーン』、『なん・なんだ』の山嵜晋平監督の名前を見つけたよ(笑)
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