ツクヨミ

二人静かのツクヨミのネタバレレビュー・内容・結末

二人静か(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

娘を失った喪失、回復したい二人が歩む道の無常。
予告編にて喪失と回復ものなリアル社会派映画な雰囲気を放っていた本作、運良く監督と脚本家の舞台挨拶が付き上映があったので挑んでみた。
まずオープニング、手持ちカメラのブレブレ感で駅前ビラ配りをする男女、幼い娘が疾走し"探しています"をお願いしますと配る二人の疲れ切った感じ。セリフで言わなくても如実に映像に染み出してる喪失が伝わってきた。
まあストーリー的にはそんな喪失を抱えた二人を丁寧に映していく、たまたまビラ配りを助けてくれた妊婦に肩入れしていく妻と徐々に同僚のパパ活女子と絡んでいく夫。喪失をどのようにして埋めるか、回復とはいかずになんとか人間関係で埋めようとする二人、何故か夫婦なのにお互いの存在で埋めようとしない嫌に冷め切った夫婦関係もまた秀逸だ。
しかしそんなある意味逃避も終わりの瞬間が訪れる、犯人からの手紙だと思っていたらあの妊婦が書いていたことがわかり、もう会わないでと言われる妻。パパ活女子との関係を見限られる夫、二人の逃避が終わりを迎え飲み屋で項垂れる二人の佇まいよ。酒の力で過去を語りだす夫のクローズアップ長回しに涙こぼれそうになりまた虚無感を感じる中盤に戦慄した。
そして後半妻は会ってはいけない妊婦と逃避の旅へ、次第に妊婦の過去が明らかになり監禁されていた子供だったとは…。失踪した娘を持つ女とかつて失踪監禁されていた娘の関係性がカチッとハマる喪失を人で埋める人間関係構図に震えた。だがしかしそんな関係性も束の間、やはり冷め切った夫婦のみに戻っていくラストのセックスシーンに無常感を解放させられる。
あとやはり演技面で妻を演じた西山真来さん、"カウンセラー"でも異彩を放っていたが今作でも無常な佇まいと何をするかわからない危うさがあって凄かったなぁ。やっぱりすごい俳優さん。
そして舞台挨拶で監督が言っていたラストの解釈いっぱいある話はめちゃくちゃ考えさせられる、最後にラジオで語られる解放された女児とは誰なのか…。作品には関係ないけど監督の好きな映画がフェリーニ"甘い生活"とお答え頂きました、楽しい舞台挨拶でした。
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