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雪山の絆のmofaのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
5.0
【幾度も、絶望の淵に立たされる】

実話になります。
有名なのは、同じ事故を題材にした1993年の映画「生きてこそ」
今回は、「インポッシブル」など手掛けたバヨナ監督がメガホンをとった。
「インポッシブル」でリアルな描写に敬服した私は、
この作品を楽しみにしていたので、
配信は喜ばしい事だったけれど、
正直、正月からの災害や事故が、
この作品を観る事を躊躇わせた。

 観るのはもっと先でいいか・・・
バヨナ監督作品のリアルさを知っているからこそ・・・
回避すべきかも・・・と思った。
 
自然の怖さ、過酷さ、
そして、人間の強さ。

私が躊躇した理由は、それではなかった。
生き残れなかった人々は?
災害や事故で、
亡くなってしまった人たちは、
人間の強さから、除外されてしまうのだろうか。


この作品を観た後に、私は、
残った人々が、
人間の強さであり「奇跡」と言うならば、
残れなかった人々は?と思うだろう。
 その答えが、どうにも思い浮かばない。
その時に抱える虚無感が、私を怯えさせた。


けれど。
長らく、映画を観ていると、
たまに「今観るべきだ」という声がする時がある。
 この作品は、まさにそれだった。

答えのない怯えを抱えたまま、
何故か、この作品を観る。
144分。
そのリアルさに圧倒される。
映像、役者陣の演技。
私は、何度も何度も、
絶望の淵に立たされた。
 まさに、追体験だ。

自然の恐ろしさと美しさ
人間の強さと、「生」への執念
そして、その「生」が、
極限の葛藤と選択を、迫らせる。

144分の中で、私なりの解釈から、
答えを見いだせた。
私の迷いは、ひどく傲慢だったと気付かされた。
 
この作品は、苦しくて重い。
けれど、生存者たちの強さや、
その奇跡を強調した作品ではない。

そして、私は、
生と死・・・
その意味を区分する事の無意味さ。
この出来事を「悲劇」や「奇跡」と
区分する事の、
傲慢さを学んだのだ。

 映画作品として捉えた時、
この作品は、
大きなスクリーンで観たかったと思う。
 それほど、
雪景色が息をのむくらい美しい。

でも、その美しさが
幾度もの絶望を生み出す。

神なんていない。
神は、人々の中に存在しているのだ。

非常にリアルでした。
飛行機事故のシーンや、雪崩のシーンとか。
そして、息をのむような雪山の絶壁の景色。

更に、そこで生き抜こうとする人々の心情も、とても緻密。
弁護士志望で、
インテリジェンスに富んだヌマが、
語り手だった事が、とても大きい。
常に冷静で静かな語りは、
彼らの苦悩や葛藤を、
際立たせる事に成功している。
(少しアダムドライバーに似てるんだよね)

そして、キャスト陣の壮絶な役作りも、
素晴らしかった。
多くが新人さんだという事らしいが、
そうは思えないほどの、パワーを感じた。
 撮影も、過酷だったと思う。
あの痩せ方は、キャスト陣の体を心配するレベルだった。
本当に、心から敬意を表したい。

これだけの人たちが生存したいうのは、
ラグビーのチームメイトだったという事もあるのかな?
体格や体力もさる事ながら、
互いに鼓舞し、支え合えた事が
精神的に大きかったのかな~
と思いました。
144分、視聴者は、
このチームと一緒に、
苦悩して葛藤して、
何度も絶望の淵に立たされる。
 そして、この作品の意味もまた、
観た人それぞれの中にあるのだ。
 

☆俺は別の神を信じる
☆無駄死にじゃない
☆意味を与えられるのは自分だけ
☆奇跡?奇跡って、なに? 


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