藍紺

雪山の絆の藍紺のレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
4.1
1972年に起こったウルグアイ空軍機571便遭難事故、今までも映画や文献で事件の顛末は知っていたのだが、今作はどのメディアよりも雄弁に生々しさを訴えかけてくるものだった。

飛行機墜落時の衝撃の激しさと惨たらしさ、極寒のアンデス山脈、自然発生する雪崩の恐怖、壮絶な飢えとの闘い。
72日間にも及ぶ遭難生活という情報を知っているので、墜落後3日目の文字が映し出されると、観ているだけなのに心がへし折られ絶望する。
そんな中でも絶対に生き抜いてやるという信念を持ち、仲間とともに生きて戻ろうと誓いあう若者たちのたくましさに驚嘆した。
ある登場人物が、自分が信じる神について語りだしたシーンのセリフは、哲学的で神々しさすら感じられて、人間ってなんて凄いんだろうと思わずにはいられなかった。

生きるためには必要だった禁忌を犯す行為も、その作業する様を直接的には映し出さない配慮が感じられて、制作者サイドの当事者たちへの敬意も感じられたのが印象的だった。

過酷で残酷な物語ではあるが、雪山の連なりのなんと荘厳なことよ。恐ろしい山々だがそこに美しさも感じてしまう迫力ある映像に魅入られてしまいました。これ配信じゃなくて映画館で観たかったなー。
藍紺

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