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雪山の絆のuchiのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
3.9
 1972年ラグビー部がチャーターした旅客機、乗員乗客45人がチリに向かう途中、アンデス山脈に墜落、過酷な環境の中16人の生存者がどう命を繋いだか…。
 「生きてこそ」のリメイク、壮絶な実話です

 「生きてこそ」に比べ、本作の方がドキュメンタリーチックに仕上げられ、よりシリアスな印象受けます。
 想像を絶する環境はリアルに伝わり、もし自分がその場にいたら、どのような選択をし、どのような立ち位置を取り、どこまで耐える事ができるか?考えてしまいました。

 あの環境下で16人もの生存者がいたのは奇跡的と記したいところですが、
 私は敢えて奇跡と言う言葉は使いたくありません。
 彼らが生き続ける事が出来たのは、生きると言う事を信念にした、強い精神力と行動力に他なりません。彼らは運命をねじ曲げました。
(ご参考 奇跡→常識で考えては起こりえない不思議な出来事や現象)

 有名な事件なので、知ってる方も多いと思いますが、一応ネタバレしときます。

     以下ネタバレ注意






前作のタイトル「生きてこそ」ALIVEも本作の「雪山の絆」も、この事故を作品化するにあたり本質的な意味を捉えた秀逸なタイトルだと思います。

 あの過酷な環境の中、16人もの方が生存できた理由の前提として、ラグビーというストイックなスポーツの部員達であった事も挙げられると思います。
 鍛えられた肉体と精神。仲間を想い敬う気持ち。ラグビーを通じ絆がすでにあったからこそ、その絆はより深まる事ができた。

 雪山での墜落はその時点で生きているのは奇跡です。(ここは奇跡でよいと思います)
その後、彼らを絶望に追い込むのは自然の脅威。見渡す限りの雪景色だけで不安つのりますが、覆い被せるような雪崩…。
 大自然の中で人がいかに無力か…。

 さらに、捜索の打ち切りのニュース…。
救出の期待が断ち切られてしまう。
 このニュースを聞いた時の彼らの絶望感は
想像できる範囲を遥かに超えていると思います。

 そんな中、仲間が衰弱し亡くなって行く…

 それでも彼らは諦めませんでした。
支え合い、励まし合い、協力し合い。
 仲間はやはり、かけがいのない存在だと
改めて思います。

 そして、生き抜く為に彼らが克服しなければならなかった大きな問題が餓え…。
 本作を語るにあたり、大きなポイントになるところだと思います。

 もちろん食料はありません。生き抜くために彼らがとった行動は…。
 仲間を食べる事。
 実際のところも、この問題については、物議を醸し出していたようです。
 人を食べてまで、生き抜くことが良いことなのか、作中でも意見は分かれました。

 私は、この非現実的な環境の中の選択については、個々の選択が全て正解だと思います
 常識的な倫理観に従い、食することを拒み死の選択をするのも正解。それだけ人、仲間を食べるということは、尋常ではありません。
 また、生きるために倫理観を排除し、人、仲間を食べるのも正解。
 この非現実的な環境下で、日常的な倫理観を当てはめる必要は全くないと思います。
 亡くなられた方の尊厳だけは忘れないようにするのは必須です。

 今の私に当てはめると、私の選択は「生きる」選ぶと思います。まだまだ守るべきものが多い。伝えたい事も多い。(今私が何もなく排他的に生きていたらもう一方の選択になると思います)
 実際、できるかどうかは分かりませんが、尊い気持ちを持って勇気ある行動を試みると思います。
 
 彼らが「生きる」選択をし、とった行動は
勇気ある行動と称え尊重したい立場です。

 結果は知っていましたが、捜索隊として
出掛けた2人が人に出会えた時、残った人達の頭上にヘリコプターが見えた時、ほんとよかった!という思いでいっぱいになりました。
 ほんと、ほんと、生きていてよかった。

 人って生きていると、良い事も悪い事も
楽しい事も嫌な事も、いっぱいありますよね
でも、そんなこんなも生きているからこそ!
だと思うんです。

彼らはパイロットを恨むだけでは決して生き延びる事は出来なかったと思います。
 不条理な事、大変な事、愚痴りたい事もありますが、日常に甘える事なく、明日からも精一杯、生きよう!と思える作品でした。

 エンドロールの写真もよかったです。








 
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