SNOOPY

雪山の絆のSNOOPYのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
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「事実は小説よりも奇なり」って正にこういう事だな。

小型飛行機がアンデス山脈で墜落。その時点で生き残った人たちが、辺り一面雪と岩一色の中で約2ヶ月間を耐え凌いで生還する。

正直タイトルと題材で結末は見る前から想像できるものではあるけど、物資が何もかもない環境で、時には人肉食に手を出し、決して諦めずに互いに支え合った。生還までのあまりにも過酷(言葉では表現できないです)すぎるストーリーが刺さった。

誰がどのタイミングで亡くなったのか、フルネームと享年をそれぞれ出すもんだから「ああまた1人減った………」っていう絶望感が凄まじい。

人肉食に関しても、最初こそ葛藤が揺れ動いてたのに気付いたらみんな何食わぬ顔で食べてて、環境は人をここまで変えるんだね。

何より生存者みんなが、最後の最後まで生還を諦めない固い意思が素晴らしいよ。自ら死を選んでもなにもおかしくないのに、あの状態で山越えするなんて。

たまたま制作裏のドキュメンタリー「僕らは何者だったのか」を鑑賞して、監督やスタッフ、役者たちがこの作品にどれだけの想いを込めたのかを知ってさらに思い入れが強くなった。原作読んだことないけど全てに心からのリスペクトを持ってるんだろうな。
雪崩に呑まれるシーンが印象的だったんだけど、あの一瞬の撮影だけでもあの熱量で作業してるのさすがプロ。
監督と俳優たちが肩組みながら熱唱してるの見てほんとにボロボロ泣いた。

ラストで「僕らは英雄ではない」旨のセリフ、確かに生還者としては英雄と捉えられるだろうけど、ただひたすらに生にしがみついて耐えに耐えた、人間の本能のままに動いた結果だよね。
この作品では触れられてないし拡大解釈になるけど、特に「すごいこと」を成し遂げたわけじゃないのに周りから英雄と祭り上げられると自分のこと錯覚する。空っぽの英雄が生まれる。今回の生還者たちは、何者でもなかったはずなのに突然英雄と祭られるもんだから、悩んだのかな。その葛藤すらも演じきった俳優たち、改めてすごい。

当事者にしか理解できないはずの経験を、画面越しでも体感させてくれた。いい映画でした。
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