すし酢高跳び

ミッション・ジョイ ~困難な時に幸せを見出す方法~のすし酢高跳びのレビュー・感想・評価

4.8
今回もまた素晴らしいドキュメンタリーに出会いました。こんなにも観終わって、多幸感で胸が一杯になる作品もありません。

今の世の中、生きづらくて何かを変えたくてもがいても先が見えず、人のことよりまず自分ばかりに目がいく事ばかり。いつからか、心が貧しくなっているんじゃありませんか?

あ、先に言っておきますが、私は日本人らしく無宗教です。何かを崇めたりすがったりもしません。しいていえば、自分の哲学に基づいて「じゅんちゃん教」でも信じてると言っておきましょう。

この作品は、ダライ・ラマ14世とエドモンド・ツツ大主教の対談ドキュメンタリー。2人ともノーベル平和賞を受賞しています。
2015年に2人は対談し、2021年にツツ大主教は亡くなっていますので、貴重な映画です。

チベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世。輪廻転生を信じているので、13世が死去すると転生した子供を選ぶのです。結果2歳の時に選ばれた為、親の愛情はなく育ちます。10代の頃には政治的な責任も負わされ、24歳の時中国に侵略された為、インドから亡命しました。

エドモンド・ツツ大主教はアパルトヘイト(人種隔離)政策に反対し、黒人解放に尽力しました。

とにかく2人は子供のように、互いを見つめては大笑いし、お茶目な魂の兄弟。観ているこちらも笑顔になります。

映画は2人の生い立ちについては、アニメーションを使って振り返ります。

56年も国を追われ帰る場所がないのに、どのようにその悲しみを癒しているのか、ツツ大主教は尋ます。

幸せは追い求めても捉えることが出来ない、人は目の前の外側ばかり追う。お金や良い車。だけど本当の幸せは内側にあるもの。健康であるからこそ、精神的にも満たされるのだ、と。

そして、今目の前の悲しみや憎しみ。
同じ角度からばかり見ていては、そこしか見えないが、多角的に違う見方をしなさい。これは新たなる学びなのです、そうダライ・ラマ14世は答えます。

ツツ大主教は『中国は意図せず、世界に素晴らしいプレゼントをくれたね』とダライ・ラマ14世の事を讃えます。

こうした精神的指導者の言葉は、まさに金言。

私は逃したくなくて初めて映画を観ながら、小さなノートにメモしながら鑑賞しました。

この金言だけでなく、科学的にも調べているのが、今回面白い所。

人が幸福度が高まると、免疫力が向上するそうです!この幸福度が向上するのは、誰かと繋がり誰かに優しくする事だそう。

また、神経学でもMRIを使い、心の乱れやうつ、恐怖心や不安のメカニズムが測れるのならば、慈悲の心や親切心も測ることが可能ではないか、と実験。

音を聞かせて、熱さや痛みを与える実験なのですが、一般の人は音を聞くだけで、まだ熱くもなければ痛みも無いはずなのに、脳が勘違いして赤く痛みを現しました。
しかし、日頃から瞑想をしている僧侶達は、実際に熱くなって痛みがある時以外は反応しないのです。
しかも、一般の人の脳はその後も思い出しては痛みを感じ赤く反応していました。

私たちも、悲しみや怒り、妬み嫉みを何度も反芻しては、いつまでも立ち直る事が出来ない事がありますよね?それが、これなんです。

怒りや妬みは有害であり、いつか健康を害する。

幸福は学習出来て、教育する事の出来るスキルなんです。

平常心を保つ習慣は筋肉を鍛えたり、歯磨きをする習慣となんら変わらないのです。

また、ツツ大主教は1948年、ヨーロッパの白人が中心の世の中で、黒人の専用居住区で生まれ育ちました。父は酒乱で母を殴ってきたのを見て育ちました。それでも、ツツ大主教は『人は善行をする生き物』と疑いません。

国境なき医師団のように、リスクがあっても惜しみない愛と慈悲、労りを与え続けている。それこそが本来の人の姿だと。

アパルトヘイト政策では、多くの黒人たちの命が未来が奪われました。酷い事は世の中に沢山あります。でも良い事も同じだけある。悪い事をした人を許すことは、決して忘れる事ではありません。しかし、記憶をコントロールする事は出来ます。
許す=弱さ、ではありません。

まずは、思いやりの気持ちで自分の家族を幸せにしましょう。それを皆がする事で、いつか社会が幸せになり、広がりを見せれば世界が幸せに満たされるのでしょう。

せいぜい生きても100年です。
私もお二人にならって、地球に害を与えず生きていきたいと思いました。
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