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ミッション・ジョイ ~困難な時に幸せを見出す方法~のもちのレビュー・感想・評価

3.5
ダライ・ラマは幼い頃から孤独を経験し、祖国を追われ難民となったが、2歳から宮殿で暮らし、法王として亡命した。
デズモンド・ツツは貧しい家庭に産まれ、父が母を殴るのを見て育った。何度も病を経験し、またアパルトヘイトの犠牲者でもある。
両者とも大変な苦労を経験しているものの、育ち方が大きく違う。
その違いが表れている、と思ったシーンがある。

絶望を経験した者にかける言葉として、ダライ・ラマの発言は理論的だった。
彼は科学的な人間で、物の考え方にもそれが反映している。
家族と離れて泣く少女にも、「考え方を変えてプラスの側面を見れば悲しくない」(ニュアンス)と答えていた。
心を鍛えることを説き、仏教の教えと科学的な理論に基づいて合理的に物事を捉えている。

一方ツツは、「頭ではわかっていても感情はどうにもならないのが人間だ」と発言した。
自らも貧困と差別の犠牲者として惨劇の渦中にいた彼は、苦しむ人々と同じ立場で悲劇を目の当たりにしてきた。
私たちが想像もつかないほど、多くの哀しみを知っているのだろう。

二人とも性善説の考え方である。
人と繋がり、人に親切にすることで喜びが得られる。
幸せは外に求めるものではなく、自分の内側にあるもの。
祈りを捧げ、静かな時間を持つこと。

二人の考え方は概ね一致していたが、上記のように"感情"については、意見が分かれていたのが印象的だった。
エンドロールの途中で二人の言葉がそれぞれに表示されたが、そのツツの言葉は、映画の中で私が一番ぐっときた言葉だった。



この映画を観て、実際に2人にお会いしたかのような気分になれた。
それだけでも観る価値がある。
個人的にはツツの佇まいと優しく深みのある表情に、ふと泣きたくなった。
心があたたかい気持ちで満たされ、大切なことに気付かされる。良い映画だと思う。
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