geminidoors

忘れられし愛のgeminidoorsのレビュー・感想・評価

忘れられし愛(2023年製作の映画)
4.5
骨格がしっかりとした御話と想像し、少し気持ちに余裕ある日に観ようと決めていた。
当方、ようやく現場も軌道に乗ってきたので、やっとこさ今夜鑑賞出来た。

本作、映画という時間枠の中で、多少なり点の繋ぎ方が早急だったりは仕方ない範疇であろうか。
風景や室内のフレームやアングルも丁寧で良かったと思うし、美術的な部分も衣装もしっかりしていたと思う。

何より主たる父娘もとより彼等を引き立てるべく脇役達がそつなく素敵だったのは大きい。脇役の配役こそ作品のツボや匂いを醸し出したりするのだから。
特に製粉所の女将?役の女優は一番の演技達者であり、彼女の位置は本作の影の功労ではないかなと思う。



話は横道に逸れるがー
個人的に映画や音楽に想うのは…時間と共に流れてゆく"動く作品"という捉え方が一つ。
眼で追い耳で捉えながら、作品の匂いや香りや空気を纏い、上映時間の川を共に漂ってゆく。
ずっと同じ舟に乗れるか、又は帆走するのか、はたまた遠く対岸から眺めながら歩くのか…
それも又、時に続き、時に変わったり変わらなかったり。

話自体や空気感が途中で寄り道したり、伏線で羽目を外そうが、肝心なのは"導入と消え方"なのだと常々感じてきた。


ROCKで云えばイントロとエンディングがバチっと決まれば、つまり良い意味で唸らされたらば、もうその曲は脳内リストに深く刻まれる筈だ。
イントロは音符以前のカウントのとり方だって入るし、エンディングはアンプのハウリングから笑い声や咳払いまで範疇だ。
つまりは全体として鑑みた(感じた)時に、そうこなきゃ!こうでなくちゃ!或いは"そうきたかぁ〜やられたア〜"てな具合に聴こえたらgoodな訳だ。



話戻して本作。
導入部に作品の精神や色合い他、小道具や行為含めて総てがあったと、観終えてから目覚める様に感じた。
個人的には、"盗んでいいものもある" を感じる映画だった。

昔、今より純な頃に初めて"あゝ無情"を読み、受けた感動を思い出したりした。
geminidoors

geminidoors