花火

Ryuichi Sakamoto | Opusの花火のネタバレレビュー・内容・結末

Ryuichi Sakamoto | Opus(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

仮に予備知識が無かったとしても、本作の被写体が余命幾ばくもないことが分かるのではないだろうか。そんなことを思ったのは、鍵盤を弾く水分の少なそうな節くれ立った指や生気のない顔のアップ以上に、ピアノの周りそこかしこに仕掛けられたマイクの群れがどことなく病床に横たわる患者に繋がれた点滴や生命維持装置を思わせたからだ。もしくは普通のコンサートとして客席に居れば絶対に聞こえないような荒い息遣いまでも録音しているからかもしれない。そう考え始めると、ハンマーが弦を叩く画面は心臓の鼓動のように見えてくる。手元が反射する鍵盤蓋と眼鏡。演奏と、それを撮影した素材で構成される、ピアノ→音楽にまで身体が拡張された、音楽に生きた人間の肖像。人間が光のように輝いて見えるとすれば、それはこういう映画だろう。
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