Ars longa,vita brevis
亡くなる7ヶ月前に8日間かかって演奏した20曲。
彼が残した最初で最後のソロピアノコンサート映画。
場所は「日本でいちばん音がいいスタジオ」と彼が評するNHK509スタジオ。
ピアノは彼のためにカスタムメイドされたYAMAHAのグランドピアノ。
観客はいない。
モノクロの映像。
映し出されるのは坂本龍一とピアノだけ。
余計なものが一切ないシンプルな空間で音だけが鳴り響く。
観ているこちら側も息を呑み、余計な音を立てないように彼と指先を視詰め、耳を凝らす。
まるで彼が命と引き換えに、音を差し出してくるような、一音一音厳粛なピアノの響きだった。
体調はもちろん万全ではなかっただろう。
休憩を入れながら、それでも自分の曲を慈しむように、大切に、懸命に、情感を込めてピアノを弾く彼の姿。
彼の紡ぎだすピアノの音が胸の奥まで沁みてくる。
自然と涙が溢れてくる。
坂本龍一はもういない。
喪失感は未だ消えてはいない。
けれど、彼はたくさんの音楽を残してくれた。
その音楽は、長く私たちの中に生き続ける。
Ars longa,vita brevis
芸術は長く 人生は短い
最後に素晴らしい音と映像を残してくれてありがとう。