ブリリア短編。
ハロウィンでワンダーウーマンになりたい少年の物語。
MtFのトランスジェンダーとトランスヴェスタイトとセクシュアリティを混同している印象は受けるがー女装をしたいことは女性になりたいことを意味しないし、彼の恋愛対象が男性であるわけでもないー、彼がプエルトリコ系の移民である描写もあり、ジェンダーと移民の問題が交差している。
親にカミングアウトすることは勇気がいる。親がジェンダーの問題に理解があれば、打ち明けやすいのかもしれないがーそれでも困難は生じるー、筋肉ムキムキのシス男性の父なら難しい。男らしさが父のアイデンティティーを象徴しているし、経済的に困窮している描写もあるからアイデンティティーを承認しようとする「余裕はない」。
得てしてアイデンティティーの承認の物語は、理性的な対話で問題解決をさせがちではあるが、本作はしない。対話は断絶している。その代わりに父もまたワンダーウーマンになることは、劇的な展開でありつつきっと理解の第一歩になるはずだ。
ワンダーウーマンがDCヒーローにおいてどのようなジェンダー/アイデンティティーの位置づけになっているかは定かではないが、新自由主義的な「戦う姫」を超えた存在となって少年らに受容されればいいと思う。