よかったです。
元々の三部作は高校三年くらいの頃に観に行きました。物語シリーズと異なるキャラクターデザイン、空間描写、ぱにぽにで頭角を現した尾石監督の斬新すぎる演出、何より羽川さんとキスショットのおっぱいに衝撃を受けたのが遠い昔のように感じられます。
初めて触れたのは偽物語ですが、私は物語シリーズに強烈な衝撃を受け可愛い女の子の絵を描くようになりついには今私は18禁同人作家としてまさに羽川やキスショットのような巨乳の女の子を描きまくって生活しています。これも全て渡辺明夫先生のせいです。私は被害者だと思っています。それくらい渡辺明夫先生の絵は素晴らしいです。本作に先生は殆ど携わっていないようですが…
当時観た時は3部作ということで物語がぶつ切りになっておりスパンが空いていたこともあって正直物語を追うというよりかっこいい阿良々木暦くんのアクションと羽川さんとキスショットの巨乳しか観てませんでした。
ですので今回通しで傷物語を見れてよかったです。戯曲をアニメに持ち込んだ演出はよくあるけど尾石さんの演出のせいでめっちゃ変な映画に仕上がってます。よかったです。
西尾維新はちゃんと高校生をガキとして描いているのが凄く好感が持てます。羽川だけは最強超人になってるけど、それだけ家庭環境に追い詰められていたと解釈することはできるかもしれない。
阿良々々木暦くんは大人によって導かれ、そして最後まで大人に頼りっきりでした。何より人類の敵としてキスショットを殺害するという判断ができなかった。それは寄生獣でシンイチがパラサイト後藤を人類の敵として殺すことを決断したあのシーンと明確に対比できます。
寄生獣の終盤は人間讃歌として作ったという作者のインタビューの通り、作者は同じ生き物として並列のパラサイトを殺害する決断をシンイチにさせることで人間の価値を肯定したかったのだと思います。対して傷物語は人間の心の弱さ？によって殺害する決断ができなかった。全てがうやむやになり全員が不幸になることで物語は一応の決着を見せた。
傷物語を一言で語ると人間って愚かだよねぇ、という悲しいお話なんですね。そんな等身大のインキャ高校生として描かれる阿良々々々木暦くんが僕は好きです。
この映画のラストカットは忍野忍に阿良々々々々木暦くんが気まずそうながらも微笑みかける絵でした。あの笑顔はまあ多分だけど相当気持ち悪いものなんじゃないかなと思う。忍野忍目線のカットだからこそそれが強調されてるはず。
事故で五体不満足になり殺してくれと叫ぶ患者に医者は殺すことはできないと言い治療を施したとして、退院する患者に医者は微笑みかけることなんてできないと思うんだけど。阿良々々々々々木暦くんの超特大のエゴがあのラストカットには潜んでる。それでも生きていこうよ。いいことあるはずだからってあの忍野忍に言える気概ってなんだろう。等身大として、って言ったけど相当タガが外れてるよね。
物語シリーズに限らずいわゆるラノベ系というか萌えアニメを最近まったく見ていなかったので冒頭の羽川のパンチラで、ああすごい懐かしい！！と感動しました。男は自分からはまったくコミュニケーションを取らないどころか女の子を邪険にさえ扱うのに女の子は積極的に男に優しく接してくれて連絡先まで自発的に教えてくれちゃうなんて、それなんてキャバクラ？ガールズバー？すごい女性を性的に扱ってるし。2000年代の萌えアニメってキャバクラだったのかな？なんて思いました。最高！別にまったく否定してません。エンタメとして心から素晴らしいなと思いました。
でも、そんな令和に上映することもあってか本作はエッチなシーンが相当削られています。それは作品のTragedyさをより強調するためだったんだと思うけど2000年代ラノベ原作映画として、何より物語シリーズ作品としてやりきってほしかった気もします。
にしても羽川さんが本当に不憫で…。阿良々々々々々々木暦くんは彼の状況のせいでもあるけど羽川さんをたらしこむようなセリフばかりでこれじゃ恋に落ちても仕方ないというか、もう付き合っててもおかしくないと思うんだけど、、あんなに献身的に阿良々々々々々々々木暦くんのことを支えていたのにまさかこの出来事の１ヶ月後に別の女性と阿良々々々々々々々々木暦くんが交際を始めてしまうなんて。慈悲はないのかと思います。彼女の家庭環境のこともありますし。
正直阿良々々々々々々々々々木暦くんとキスショットのtragedyというより圧倒的に羽川翼のtragedyなんじゃないかと思いました。お前ら二人は自分の勝手好みにやりたいようにやったんじゃないのか。ならどんな結果になろうが後悔するんじゃないよ。それは人に迷惑かけて生きる人間が一番してはいけないこと。羽川翼が一番の被害者。
