ヨミ

傷物語-こよみヴァンプ-のヨミのネタバレレビュー・内容・結末

傷物語-こよみヴァンプ-(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

合計で3時間超ある既存の『傷物語』3部作の総集編であったが、過剰にあったセクシャルな要素を排除することでシリアスさ、というより深刻さを底上げしていた。それによってより「息が詰まる」感じは増していた。
相変わらず神崎暁の音楽は冴え渡っており、また象徴性の激しい演出は鋭く、洗練されていた。
ところでテレビアニメの『物語』シリーズでは阿良々木暦のアホ毛はファルスとして作用していたのだけど、本作では日章旗が象徴的な何かを一身に引き受けようとしており、しかしそこの意味は掴み切れなかった。
ただ総集編、ということを念頭に置くと「そこも省くのか!」と驚く部分もあり(たとえば忍野がキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの心臓を抜かないことで、彼のトリックスター的立ち位置は弱化している)、ただしそれを評価するには『傷物語』シリーズをぼくが観たのが最近すぎる。
本作の編集元である『傷物語』3部作という長大な「フッテージ」が、10年近く前の作品であるということが感じられない強度と新規さを持つことが再確認させられ、本作がアニメーション表現としてひとつの極北に位置することは何度も感じられた(ある意味でその流れに『鬼太郎誕生』のバトルシーンがありうる)。
年始から向こう、本作を観るために『物語』シリーズを視聴してきたので終わってしまうことは寂しいが、自分にとって避ける対象でもあった西尾維新を、今後受け止めるための素地が用意されたと考えることもできるのだろう。
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