映画大好きそーやさん

傷物語-こよみヴァンプ-の映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

傷物語-こよみヴァンプ-(2024年製作の映画)
4.1
血によって導かれた、混沌たるボーイ・ミーツ・バンパイア。
物語シリーズには1度も触れたことがなかったのですが、全編に渡る凝りに凝ったアニメーションによってなんの問題もなく楽しませてもらえました。
アルフレッド・ヒッチコックの『鳥』を想起させるOPシークエンスから、その黒く歪に光る世界観に引き込まれました。
ルックは色調が落とされつつも、独特の雰囲気を演出するのに一役買っていましたし、劇伴も耳に残る素晴らしいものばかりでした。
アクションシークエンスには、グロテスクな描写も多く展開され、腕が舞い、首が飛んでいく様はアニメーションだからこそ面白く観ることができたようにも感じます。時には、臓物も飛び出すはっちゃけ具合でしたね!
時系列を前後させながら進行させていく語り口は、作品に対する興味を増幅させ、集中力を持続させる効果があったと思いますし、純粋に作品の味となっていて良かったです。
ただすべてを褒められるような作品ではなく、文字カットの多用が煩わしかったことや、羽川翼が作劇的な意味合いで動かされている感覚が常にあったこと、アニメーションとしての味付け、演出は濃かったものの、すべてにおいて過剰過ぎるが故にクドさも多分にあって、後半は飽きのようなものを感じている自分がいたことと、上げればキリがないほどに気になる点はありました。
もう少し書いておきますと、3部作を1本にまとめるにあたって物凄くテンポ感が良いものになっていましたが、早急に物語が転がっていくからこそキャラクターたちのバックボーンがわかりづらく、感情移入がし難かったこと、アニメーションを盛り上げる、アガるものにするためだけでしかない(作為的な)アイテムの数々が、戦うフィールドであったり、背景であったりに置かれていたこと、また効果的に作用していた箇所もあれ、看過できないレベルで浮いているCG使用箇所があったこと等々も、鑑賞中の気持ちが露骨に下がりました。
総じて、幾つも気になる部分はあれど、過剰なキャラクター、アニメーション、演出によって無理やりにでも魅せられてしまう作品でした!