MasaichiYaguchi

火だるま槐多よのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

火だるま槐多よ(2023年製作の映画)
3.4
夭逝の画家、詩人の村山槐多は知っていたが、その作品にインスパイアされた本作は、熱量をもって世界観を描き出す。
村山槐多の絵画「尿する裸僧」に魅入られた法月薊が「村山槐多を知っていますか?」と街頭インタビューをしていると、「私がカイタだ」と答える男・槌宮朔と出会う。
特殊な音域を聞き取る能力を持つ朔は、過去から槐多が語りかけてくる声を何度も聞くうちに神経を侵食され、自らを槐多と思い込んでいた。
朔が加工する音は同じく特殊な能力を持つ者にしか聞き取れないが、夫々予知能力、透視能力、念写能力、念動力を持つ若者4人のパフォーマンス集団がそれに感応し、薊や朔と行動を共にしていく。
本作は、槐多の作品に魅せられた現代の若者たちが、槐多の作品を彼ら独自の解釈で表現し再生させ、時代の突破を試みる前衛的なカルト映画。
新型コロナ禍で表現する事の不自由さを感じた人々は少なからずいると思う。
映画で度々登場する「尿する裸僧」は、流行性感冒で夭折した槐多の溢れんばかりの表現する事への渇望を表しているように感じられる。