イペー

不意打ちのイペーのレビュー・感想・評価

不意打ち(1964年製作の映画)
3.3
"秋深き隣は何をする人ぞ"

60年代のアメリカ。都市生活の利便性が向上する反面、若者人口の増加によって旧来的な"古き良きアメリカ"は解体され、親世代は皆、過去に経験の無い、新しい不安を抱えていた訳です。
一方で公民権運動の高まりなど、内在していたマイノリティの問題も表面化。
冒頭の俳句の本来の意味とは違いますが、要するに身内も含めた他者に対する恐怖心が増大していたんですね。
自閉していく個人、自閉していく社会を、狭いエレベーターという装置の形に切り取ったのが本作なんじゃないか、と。
その点、現代の日本にも通じる部分はあるかもしれません。

クローズアップの多用など、大袈裟とも思える身振りで不快感を覚える描写が積み重ねられていきます。執拗に繰り返される厭な場面の連続は、現代の過激な映画に慣れた方でも疲労を感じるでしょう。
悪意にせよ愛情にせよ、閉じた空間に充満すれば、いずれその濃度に中毒してしまう。適度な換気が必要ですね。
内容にあまり触れてませんが、愉快な作品では無いので決してオススメはできないです。今の自分の気分には合わなかったな。
気が滅入ったよ…。

秋も深まり、隣りが夜中にこういう映画を観て、孤独にレビュー書いてる自分の様な人間でない事を望む!
イペー

イペー