散歩

アメリカン・フィクションの散歩のレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.1
アルトマンみたいな皮肉とアレクサンダー・ペインのような雰囲気が合わさったみたいな印象の作品で個人的にはこういうの好きなので最後まで楽しく観れました。主人公自体がちょっと上からな所があるので一歩間違えたら絶望的に好感度がない人物になりそうなんだけど、社会の「表面的な意識だけが異常に高くて中身は本当にスッカラカン」な所がもう病的に酷いので、つい主人公に共感してしまったり笑ってしまったりしてしまって、そういうところは脚本と演技の魅力だったなぁって思いました。そして作品のもう1つの軸として描かれる家族の物語は彼にとってのリアルで見た感じはとても魅力的なドラマなはずなのにあまりそこに向き合ってなくて観てる間は結構不思議だったりもしたんですが、時代の寵児として祀り上げられたシンタラも実は業界に迎合しているといった部分と合わせてクリエイターが書きたいものを書く難しさを描いているのかなぁって思ったりもして。まあこの辺は自分の頭にはちょっと難しかったんですが、最後に分かりやす~い業界のどうしようもなさが提示されて物語が終わって、現実ではアカデミー賞にノミネートされてしまうっていうね。この部分が一番笑えたりもするんですが、ノミネートまでしておいてこの先業界が1ミリも変わらないのであればそれこそが今作が描いた皮肉の体現になってしまう、っていうのを果たして彼らは分かっているんでしょうかね。

最近、日本の役者が演じる日本が舞台のドラマが評価されてそれをやたらと誇りたがる人達もいたりするんですが、結局そこで描かれている日本人もサムライ・ニンジャ・ヤクザとステレオタイプなものばかりで、個人的にここ最近っていうかここ数年ずっと「なんで日本描写だけいつまでたってもステレオタイプが許されてるんだろう?」って疑問を持ち続けていたので、今作の内容は個人的に結構身近なところで刺さる作品でもありました。だからといってこれを根拠に黒人差別に分かったふりをして歩み寄ったらぶっ飛ばされそうですが。分かったふりとか分かったような顔って、なんかしちゃうんですよね。
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