ハナカズキ

アメリカン・フィクションのハナカズキのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.3
自分でも忘れかけてた「アカデミー賞ノミネート関連作品ちょっとずつ見ていこうシリーズ」、5回目までつながりました!

こちらは、作品賞や主演・助演男優賞にノミネートされています。

売れない黒人小説家のモンクが、冗談半分で書いた“黒人っぽさ”を詰め込んだ小説が大ヒットしてしまうというお話です。

黒人ではない人にとって、アメリカの黒人の方のイメージってなんとなくこんな感じじゃないでしょうか?

貧困、ドラッグ、暴力、(白人)警官による射殺、ラップが好き、バスケが好き、指輪つけてる、ジャラジャラをつけてる、ファッションもあんな感じ(ファッションを語る語彙力がないので、皆さん私のイメージを汲み取って下さい笑)、独特の英語のイントネーション、など。

しかし、主人公のモンクは大学の教員もしているようなインテリで、家族も医者が多く、決して貧困家庭でもなければドラッグとも無縁。ごつい指輪もたくさんつけたりしないし、黒人特有の英語も話しません。

そして、私たちは黒人の方が登場する映画や小説にどんなストーリーを期待しているでしょうか?

人種差別に苦しむ黒人が、自分の努力で、もしくは理解ある白人の協力を得て、何かに成功する。差別と闘う。こんな感じでしょうか。かく言う私もここ最近見た黒人の方が主役の映画はこういうのが多く、その都度感動しておりました。今となってはそれがちょっと恥ずかしい。

が、当たり前ですが黒人と言ったって千差万別。結局多様性なんて言いながら「白人のイメージする」「白人が見たいと思っている」ステレオタイプの黒人の物語だけが求められているこの風潮をたっぷりの皮肉とユーモアを交えながら描いた作品です。

今までの人種差別を扱った作品とはまた違う、一歩先へ進んだような秀作でした。特にラストが秀逸です。
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