蛙

アメリカン・フィクションの蛙のレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.0
近年特に、多くの作品が生み出されている、人種差別や性差別をテーマにした、いわゆるポリコレ作品。そのポリコレの在り方を、鋭い風刺たっぷりに描いた良作。

元々ハリウッドは圧倒的に民主党支持者が多いので、リベラルな作品が多い。(共和党支持で有名なのはクリント・イーストウッド。作風から確かに!と思います)。加えてトランプ政権誕生への反発や、同時期に起きたアカデミー会員の偏り問題などから、年々増加してきたポリコレ作品。更には理不尽に虐げられた人々の感情や発端となる出来事を機に、大きなムーブメントとなっていったme tooやBLMもあり、もはやポリコレは一種のスタンダードにすらなりつつあると思います。

で、今作そのポリコレの在り方に鋭いメスが入っていって。その批判の対象は作り手はもちろん、私達受け取り手にも及んでいるから、ヒヤヒヤしながら見ていました。
そのメッセージはとても理性的で、こういったポリコレをエンタメとして消費するのは、被差別者をステレオタイプに押し込めるという意味で差別と構造的に同じではないのか?という物。確かにね。。更にはそこで留まらず、ポリコレエンタメ作品に本当に価値はないのかと、自己批判を重ねながら、どんどんテーマが深掘りされていきます。

メタな視点移動、物語的なダイナミズム、身近な日常風景を行ったり来たりしながら、テーマの深掘りがスッと入ってくる。そして観終わって感じるのは、家族や友人身近な相手、何より自分自身を思いやる事が大事だよ、と至極真っ当なメッセージ。

思考実験の末に、新しい視点が加わった様な、今の時代にとてもフィットし、人種差別の捉え方に新しい選択肢が加わった様な、刺激的で面白い体験でした。

オススメ下さったUno さん、ありがとうございます😊
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