無意識な差別とステレオタイプを皮肉ったブラックコメディであり、あまりスポットの当たらない黒人中流階級のドラマを扱った、狙い所がハッキリわかる作品。積極的に認めたくない「あるある」ネタが散りばめられており、しっかり笑いになっているのは上手いと思う。
ヤケクソで書いた黒人文学が大受けする本筋は「デトロイト・メタル・シティ」的で分かりやすく、所謂「うす甘いリベラル層」を茶化した描写など社会派ネタも豊富。そこからルッキズムやLGBTなど幅広く今風な題材を扱ってるので、軽いタッチの割に深堀りもできる（冷静に考えると属性てんこ盛りのキャラだらけ）。
俳優陣の健闘もあり面白いのだけど、ラストは正直「逃げ」と感じた。メタ的にしてしまうと、構造自体が先行してしまい「皮肉が効いてるねー」以上の感想がうかばなくなるし、どう批評しても「構造」で作品を正当化できてしまう。
つまり、主人公には「落とし前」をつけて欲しかった。世間を欺いたトリッキーな黒人作家の責任を取ってほしかった。意外と「黒人」要素を除くとありきたりなメタ映画という印象になるのが残念。悪くは無いけど…という感じ。
