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アメリカン・フィクションのsyuheiのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.5
2023年のコード・ジェファーソン監督作品。

黒人作家のセロニアスこと"モンク"は「劣悪な環境で育ちラップをして白人警官に撃たれて死ぬ」的ステレオタイプな黒人描写の小説がウケる風潮への反発から変名で偽の自伝を書くとこれが空前のヒット、文学賞の候補にあがり映画化まで。怒り戸惑うモンクだが黒人としての自らの人生と家族を見つめ直す。

黒人であることをテーマにしたコメディ基調のヒューマンドラマ。先日のオスカーでは脚色賞に輝いた本作、ギャグはしっかり笑えるし最後はホロッとさせられ、とても楽しく観ることができた。日本語字幕に文字化けの不具合があり視聴体験を阻害しているのが残念すぎる。途中から英語字幕に切り替えた。

黒人に限らず、人種や民族、特定の共同体や集団、わけても差別的な扱いを受けてきた歴史を持つ人々をステレオタイプ的に語ることをコメディとして描写する痛烈な皮肉であると同時にそうした語り口をマネして反発してみせるモンク自身の心境や家族観の変化を描いてみせる、うまいドラマになっている。

モンクが不本意ながら出版するニセの自伝本のタイトルに英語圏では放送禁止のFワード4文字を名づけるというくだりに大笑いした。これ、たぶんアレックス・ヘイリーの『ルーツ』のパロディになってるんだと思う。また、結構ハッとさせられるセリフも多かった。日本語でなんと訳されていたかはしらんが。

一例を挙げると、黒人にはステレオタイプに語られる以上の可能性(potential)があると力説するモンクにとある人物が投げかけるセリフ。"'Potential' is what people see when they think what's in front of them isn't good enough." 複雑な構造だがこの映画の根本的なテーマを示す英文だと言える。

https://x.com/syuhei/status/1769764620594508086?s=20
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