Monisan

アメリカン・フィクションのMonisanのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.3
観た。

これは面白い…
まず編集のテンポがとても好き。時折入るジャズも心地良いし、グレーディングの頃合いが流行りの過度な感じが無く、目に優しくて自然な色合いで良い。

映画のわりと前半なのに、リサの遺書にとても感情移入してしまった。こんな軽妙な遺書を書ける大人でありたい。

脚本が本当素晴らしい。派手な出来事は無いんだけど、登場人物のそれぞれの人間模様を観進めるだけで感じられる。
家政婦のロレインが特に素敵だったな、ゲイの兄を受け入れる懐の深さと。その結婚式の暖かさ。

バードマンを彷彿させる、リアルと混じり合う劇中劇もセンス良いし。強くは無いけど、緩やかに現代への風刺も効いている。

そしてほぼ黒人キャストなのに、それこそティピカルな黒人表現はなく、アルツハイマーの母親の表情や、家のある風景。思わず笑ってしまう台詞のやり取りは小津映画を観ているかのような悲哀も感じさせてくれる。

ただのラブコメで終わる気は無い、との事で様々な映画の終わり方を監督に提案しているくだりは、正直余計な気もしたけど。
まさにこの映画も終わり方に迷っちゃったのかな。

全然違う世界線のお話なのに、自分の今現在についても観ながら考えさせられた。3本足の犬の話も我が事のように沁みた。
すごい好きな映画。

コート・ジェファーソン、脚本・監督
Monisan

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