たくみ

アメリカン・フィクションのたくみのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.8
【どうしようもない白】
アカデミー脚色賞受賞作品。
途中までの感想としては「面白いけどこれでアカデミー、、?」という感じでしたが最終コーナーでまくってきました。
思い返してみればあれも皮肉これも皮肉、めちゃめちゃ良く出来ていました。
そら脚色賞だわ。原作未読なのでどこまでが脚色かはわかりませんが、どちらにせよ”どうしようもない白”を皮肉ってるのは変わらないと思います。

ツカミの講義シーンでまず最高でした。
若い世代が歴史を知るために必要な差別用語だからこそ、それを向けられる側であるモンクが教えようとしているにも関わらず不愉快だと叫びだす白人。
一発でテーマがわかる良い掴みだと思います。
配慮しなきゃって叫びまくってる奴って自分に酔ってるだけですからね。
ああいう陳腐な描き方で良いと思います。

その後出てくる出版社の担当者も映画監督も受賞作品の選考委員もみんなこの感じです。
結局黒人はこうあって欲しいという箱にハマっていれば大喜び、そうでなければ批判。
そんなステレオタイプが嫌だからめちゃくちゃな事を言っても黒人らしいと受け入れられてしまうという雁字搦め。
近年稀に見る鋭さの皮肉映画だなと感じました。

そんな感じでどんどん話が進むのですが、ラストのとある展開である事に気付かされました。
結局映画としてのオチを求めるからこそ、黒人である彼がどんな言葉をラストに残すのかを待ってしまっている自分がいました。
そんな奴をあざ笑うかのような、中指立てられたようなラストでした。

黒人の人たちをステレオタイプにはめ込んで消費するなんて最低だ!と思わせる作りをしておいてラストのあれはズルいですよ。
最終選考で落とされた気分です。
まだまだ知識も仁も足りないですね。
精進します。

【その他メモ・独り言】
・ファック。
たくみ

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