たかっし

アメリカン・フィクションのたかっしのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.0

思慮深いが偏屈な黒人作家セロニアス。
自身の作品が出版出来ず、皮肉を込めて描いたBボーイな小説がバカ受けしてしまい大変なことに…。

姉の急死とその姉が面倒を見ていたアルツハイマーの母。ゲイでドラッグに依存しがちな弟。
皆を母のように優しく見つめる心優しい使用人(←彼女の演技が最高)
セロニアス自身の生活の描写が苦くかつ愛おしい。

そのリアルな生活と対照的に、小説の件でどんどん黒人のステレオタイプに押し込められていくシュールさがなんとも笑えるが辛い。
セロニアス自身のコンプレックスに対してビジネス的に割り切り、そこがまた彼の自尊心を傷つける黒人作家。
ジョニーウォーカーのラベルで大衆の求めているものを上手く表す編集者。
どうしようもなく俗物だけど、リアルはこうであるに間違いない出版社とハリウッドのプロデューサー…。
特にラストはハリウッドへの強烈な皮肉だ。

ところで本作品は見事アカデミー賞脚色賞を受賞したが、日本ではアマプラ配信のみというのが本作品のテーマと照らし合わせるとそのこと自体が皮肉でもある。
…きちんと劇場で見たい映画です…。
たかっし

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