柾木嶺

アメリカン・フィクションの柾木嶺のレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.0
普遍的文学を目指す黒人作家が文壇への批判のために書いた「いわゆる黒人のリアル」みたいな薄い黒人像の話がなぜかヒット、文学賞で優秀賞を取るまでになってしまい……という皮肉たっぷりのコメディ作品。

黒人差別とは違うレイヤーの、「先入観とカテゴライズ」による頭の中で作られたリアリティを批判するのがメイン。なのだが、最後の最後までどうにもならない。リアリティと真実を追求すると言っている映画監督が「警察に射殺されるエンドいいね!」っていうのは本当に滑稽である。
この現実に対するしょうがなさ、みたいなものを諦めと許しをもって笑いに変えようというのがとても良い。

もちろん各キャラクター皆が立っているし、家族を顧みない中年男性が家族のひとりを失って改めて向き合う、というサブストーリーも面白い。
ここもそれこそフィクション的にありがちと言ってしまえばそうなのだが、それすらも観客がリアルに感じるためのしょうがない部分なのかもしれない。
柾木嶺

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